#21
楽しいだけでは何も変わらないよ!
私は、先月から当月に開催されている、合計8日間のIEベイシックのトレーナー研修に参加している。IE(Instrumental Enrichment)は、小川が7月のコラムで紹介しているが、その内容についてご記憶にない方もいらっしゃると思うので、以下に抜粋する。
このメソッドは、世界的に有名なイスラエルの教育心理学者、ルーヴェン・フォイヤーシュタイン教授が、発達障害を持った方の教育のために開発されたものです。日本でも2003年にNPOとしてフォイヤーシュタイン・ラーニング・センターが設立され、草の根レベルでの活動が広がりつつあります。
今回のコースには、延べ4回の実地訓練があり、先日その第1回として、ダウン症の8歳の男の子のH君に『まちがい探し』の演習を行ったのだが、私の演習の結果はさんざんであった。H君に『まちがい探し』の教材に取り組んでもらおうと色々と試みたのだが、興味を持ってもらえなかった。
しばらく悪戦苦闘していると、IEの本物の先生であるA先生がH君の隣に座り、教材に興味を示してもらうための手段をいくつも実践していただいた。H君が得意としているお絵かきや、文字書きをいっしょにやったり、歌を歌いながら『まちがい探し』の教材を解説したり。この結果、H君は徐々に準備した教材に興味を持ちだしたが、限られた演習の時間内では、教材に集中して取り組むまでには至らなかった。
実地訓練の振り返りの時間でおさらいしたことは
1)子どもとのラポール(相互信頼)を築く
2)教育プログラムに興味を示してもらうための補助ツールを準備する
3)子どもが発した解答は決して否定しない
4)子どもの能力の発達レベルを考慮した上で、少しだけ困難を伴う教育プログラムを練る
5)ラポールが深められたら、子どもに取り組みへの集中を促すために、厳しく接することも指導の選択肢に入れる
の5点であった。
この5つの課題で注目すべきことは、4)と5)である。子どもに限らず、人は誰もが、多少でも困難が伴うことは避けたいという気持ちを持っている。だからといって、自分ができることや興味を持っていることだけを繰り返していても、そこには能力開発の芽は育たない。H君の事例に当てはめれば、H君が楽しいと思っている文字書きにただつき合っていても、そこに進歩はないのだ。文字が書けるようになったら、主語と述語、そして助詞を使い分けて、文章が書けるレベルに引き上げてあげなければ、文字を使った人とのコミュニケーションはできない。もし今、H君にこのレベルの教育をしようとしたら、間違いなく拒否反応を示すだろう。その抵抗に負けて、H君が楽しいと思うことだけを繰り返せば、H君は喜ぶに違いない。そして、この行為につき合ってくれる人を好きになるだろう。でも、このことで得られた好意には何の意味もない。それは、能力開発の芽を摘んでいるからだ。
ヘレンケラーに「ウォーター」という言葉を授けたサリバン先生のように、相手が嫌がり、自分を嫌っても、執拗に粘り強く、時には厳しく子どもと接しなければならない。
従って、子どもに好かれたいという気持ちを超越して、本物の信頼を得ることに意識を集中させる必要がある。要するに、人に好かれたい、嫌われたくないという意識に魔物が潜んでいるのだ。
まさに、「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」の境地である。
※HOT WILLerとは、「独自の志を持ち、その実現に向けた活動を実直に続けている人」を指す。この方々に向けた応援メッセージを毎月贈り続けている。※
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