#70
Hoshino Senichi ~星野仙一~
私のコラムのタイトルは、Something H [aʃ]-“H(アッシュ)な何か”という意味です。
このコラムを書き始めた時から、いつかは取り上げたい「H」がありました。
それが闘将星野仙一【Hoshino Senichi】です。
北京五輪で日本代表の監督になった時、
金メダルを獲ったら書くタイミングがやってくるかなと思っていましたが、
結果は、金メダルどころかメダルなしの4位。上位3チームには5戦全敗。
星野監督は「選手がかわいそうだった」と擁護していましたが、
それが責任転嫁とネットとマスコミに叩かれ、取り上げるのは断念。
それ以来、いつか書こうと時期を見計らっていました。
◆
そして今年、日本シリーズで楽天ゴールデンイーグルスを球団創設以来、初の日本一へ。
機は熟しました。
「満を持して…」と思ったら、月初のコラムで平堀が大々的に取り上げ、
テーマの変更も考えましたが、
10歳の時からの星野仙一ファンとしては「やっぱりこのタイミングだろう」と
シンガポールからの帰りの飛行機の中でキーボードを叩いています。
(平堀が書いた星野監督ネタのコラムはこちら→http://www.h-mbo.com/category/specialist/column_hirabori/)
◆
今年の日本シリーズは、久しぶりに「プロ野球は楽しい」と思わせてくれる闘いでした。
贔屓の中日が出ているわけでもないのに、
週末におこなわれた4戦はすべてテレビで観戦していました。
巨人の貧打が少し気になったものの、
両軍の投手は実力を発揮し、しっかりとゲームを作ってくれました。
お陰で、途中でチャンネルを替えたくなるようなワンサイドゲームはなく、
最後まで逆転の期待を込めて応援できる試合ばかり、
視聴率も軒並み20%を超え、楽天の地元仙台では40%超えも続出したそうです。
クライマックスは何と言っても第7戦の星野監督の采配。
楽天が2点リードの9回表、前日160球の熱投を見せたものの
今シーズン、初めて敗れたマー君こと、田中将大投手をマウンドに送り込みます。
筋金入りのアンチ巨人の私は、
私がアンチ巨人に育て上げた息子とともに、
マー君の登板にハイタッチをし、
彼が投じる一球一球に歓声を上げていたことは言うまでもありません。
一方で、これでマー君が打たれると
この采配はスポーツ新聞の星野叩きの格好の材料だなとも思っていました。
◆
以前、同じような気持ちになった日本シリーズがありました。
中日ドラゴンズが日本一になった2007年。
第5戦に先発した山井投手が何と8回裏まで、
一人のランナーも出さないパーフェクトピッチングを続けます。
日本シリーズでのパーフェクトなんて、史上初!
しかも日本一が決まる大一番!!
誰もが山井投手の偉業に胸を膨らませていた9回裏のマウンドには
中日の抑えの切り札、岩瀬投手が送られます。
当時、中日の監督は落合博光氏。
この采配は、球史に残る非情采配として私たちの記憶に残ることに。
岩瀬投手は、9回をピシャリと押さえ、中日は53年ぶりの日本一に輝きます。
落合監督は、マスコミのインタビューに
「日本一になることが最優先。
もし逆転されて、札幌(=敵地)へいくことになったら、流れは相手に行ってしまう。
だから、9回は岩瀬で決めていた。それがウチの野球だから」
と答えていました。
◆
独自の理論を展開し、冷静で、クレバーな印象の落合監督、
球界で唯一人、闘将の冠がつく熱血漢の星野監督、
一見すると、対照的な二人の監督の二つの采配。
実は、この采配の根っこにあるものは、同じなんじゃないかと思うようになりました。
陳腐な言い方ですが、
「絶対的な信頼」と「負けた時の責任を取る覚悟」
「絶対的な信頼」とは、
大多数が支持する大衆受けする選択ではなく、
いくつもの修羅場や正念場を潜り抜けてくる中で培われる
当人同士にしかわからないもの。
外野で見ている人間が喝を入れようと、ネットで叩こうと動じない想い。
岩瀬投手は、交代を指示された時、
「1人でもランナーを出したら、自分は批判を浴びるだろうと思った」と回顧しています。
マウンドを降りた山井投手も
「最後は、シーズンを通して抑えの役目を果たしてきた岩瀬さんで終わるべきだと思った」と語っています。
◆
楽天が優勝した時、星野監督の胴上げも感動的でしたが、
私は、銀次選手が星野監督の胸に抱きついて離れず、男泣きしていた姿が印象に残っています。
今回の登板は、田中投手からの直訴だったそうですが、
それを受け入れると決めた時から、星野監督は覚悟をしていたんじゃないかと思います。
負けた時には自分が責任を取ると。
そして、選手たちにもその覚悟は伝わった。
銀次選手が星野監督から離れなかったのには、
そんな監督と選手にしかわからない想いが凝縮されていたんじゃないでしょうか。
◆
星野監督が日本シリーズに出場するのは今回で4回目。
過去3回はいずれも敗れており、五輪の成績もあって、
「短期決戦に弱い」というレッテルを貼られてきました。
しかし、星野監督が率いた中日、阪神、楽天は、就任当時、強豪ではありません。
そういうチームを必ずリーグ優勝に導くというのは、
やはりリーダーとしての資質があるのでしょう。
「理想の上司」を有名人から選ぶアンケートがあります。
プロ野球の監督は、上位の常連ですが、
経営者や管理職として、部下を持つ身としては、星野監督や落合監督から、
この「信頼」と「覚悟」を学ばなければならないのではないでしょうか。
最近、有名ホテルや旅館、レストランでの
偽装表示とも言える誤表示(!?)の問題が取り沙汰されていますが、
問題が発覚した時の経営者の記者会見では「信頼」と「覚悟」を感じることができません。
それどころか、料理長の知識不足や現場の管理過怠を理由にする経営者が多く残念です。
私自身もまだまだ未熟ですが、
星野監督のようなリーダーになりたいと思わせてくれた日本シリーズでした。
星野監督、楽天イーグルスの選手・スタッフのみなさん、
素晴らしい試合を、素晴らしい絆を、本当にありがとうございました。
34年間、星野仙一を応援する男より
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東日本大震災の被害状況(警視庁・復興庁調べ)
死者:15,883人/行方不明者:2,651人 2013年11月8日現在