株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティング

コンサルタント辻勇作のブログ

ちょっと感動した話

日々の仕事の中で「感動」を忘れない人間でありたい。
小さなことにも感動を掬い取れる感度のいいアンテナを
持っていたいという想いで毎月メッセージを発信しています。

#48

大学生の子をもつ母親の想いが、斬新なサービスを生み出した

2013年12月21日

日曜日の夜、テレビを見ていて、驚いた。

ある大学の学食で100円定食なるものがあるというニュースだった。

「え!?定食が100円・・・。マジで!?」
「100円はすごいな・・・。コンビニのおにぎりより安い。
ペットボトルのお茶1本、電車最短区間の料金よりも安い・・・」
「こんなすごいことを始めたのは、どこの大学?」

と思って、ニュースを見ていると、
この100円定食は立命館大学の学食で提供されているとのことでした。

立命館は私の母校で、一時期は「株式会社立命館」と言わるほど、
野心的かつ商売上手な学校だったので、「相変わらず、さすがやな」と
思っていました。

ニュース番組が、学生に朝ごはんの写真を撮ってもらい、
その写真を分析したところ、

・バランスが取れていると思われる朝食 40%
(定食のようなもの。ご飯、味噌汁、肉や魚)
・菓子パンやドーナッツ、ジュース、お菓子、飴玉など
バランスは良くないが何かしら食べている 40%
・何も食べていない 20%

調査の通り、これが実態なのでしょう。
私も学生時代はろくに朝ごはんを食べてませんでした。
コンビニやガソリンスタンドなど深夜のバイトによる不規則な生活、
バイトのない日は下宿している友人の家で飲んだり、夜遅くにラーメンや牛丼を
食べたりしていたので、胃の調子が良くなかった記憶があります。

このような大学生を子に持つ親の中でも、特に下宿での一人暮らしの子を持つ親は
「子どもはちゃんとご飯食べてるかな・・・」
と心配しています。
そんな子どもの食生活を心配する親に向けたサービスがあります。

大学生が学食で食べたいものを選び、レジで会計をします。
その時にレジのバーコードリーダーのような部分に学生証をかざすと、
注文したメニューのデータが記録されます。

記録されるデータは、
・日付・時間
・食べたメニュー
・メニューに含まれる栄養素(炭水化物・タンパク質・ビタミンなど)
で、そのデータをネット経由で親がチェックできるサービスです。

そして、親が子どもに電話して、
「最近、野菜食べてないでしょ」とか「○○を食べなきゃダメよ」
と食生活のバランスを取るように促します。

このサービスを知った私は、
「それは過保護すぎでしょ。大学生なんだから、自分のことは自分でやればいいでしょ」
「このサービスは本当に価値があるんかな・・・。親から電話がかかってくるのが
うっとおしいと思う学生は親がデータを見れないように、レジで学生証をかざさなく
なるやろうな」
と思いました。

まともに朝食を食べていない学生が多い中で、
立命館大学の父母会にて、子どもたちの食生活を改善してあげたいという声が
挙がったそうです。

「自分たちの子どもの貧しい食生活を解決するために何かしらやりたい」
「たくさんの食材を持って行って、私たちで炊き出しやったらどう?」
「そうだ。そうしましょうよ!」

一方で、「えっ、そこまでする必要ある?」と思うお母さんもいたようです。
しかし、賛成多数となり、お母さんたちは子どもたち食生活を改善するために、
まずは、現地調査として大学の学食にて、学生が何を食べているのかを見学しに
行きました。

すると、学食の定食は280円。

「随分、安いわね。」
「でも子供たちはこれでもケチるんでしょうね」
「食費をケチって、遊びに使っちゃうらしいよね・・・」
とお母さんたち。

現地調査を踏まえて、お母さんたちは話し合いました。

「どうすれば、自分たちの子供は朝食を食べてくれるかしら?」
「ワンコイン定食ってあるけど、500円じゃなくて100円でできないかな」
「100円ならいいんじゃない?」
「100円だったら、ケチらずに朝ごはん食べるんじゃないかしら」

というやりとりを見て、私は、

「マジで・・・100円で朝食を食べれるようになったら、インパクトあるやろな。
おばちゃんたちの考えは斬新やな。既成概念がない。」
「でも、自分なら同じ280円でも、味をめちゃくちゃ美味くする方向に進むけどな。
美味いものを食べないと食事の価値がわからん気がする。はじめは安さに飛びついた
としても、食事の価値がわからんと時間の経過とともに飽きられるような気がする・・・
まあ、美味いものを出そうと思ったら食材に原価がかかるから、280円では済まん
やろうけど。」

と思いました。
お母さんたちのやりとりは続きました。

「定食を280円から100円にすると、朝食は何食くらい食べるかな?」
「今は100食でしょ。100円にしたら3倍はいくんじゃない?」
「いや、2倍くらいじゃない。安いだけで来るかしら」
「もしかしたら、1.5倍くらいしか来ないんじゃない」
「一旦、計算してみましょうよ。」
「定食を100円で提供して、赤字になった分は父母会の予算で補えないかしら」

実際に試算すると2週間の期間限定なら30万円の費用負担で済むことがわかった。
「これなら、父母会の予算から出せるわね!」
「期間限定でやってみて、それで上手くいけば・・・続けたらいいんじゃない!」
ということで、100円定食を実現するために、具体的に動くことになった。

まずは、大学の学食を運営する生協に交渉した。

一見、100円定食という非現実的な提案だったが、
子供を思うお母さんたちの熱い気持ちが生協の人たちを動かした。

原価を極力抑えるために、新しいメニューが決まった。
バイキング方式でご飯、味噌汁、おかず3品で100円。
たくさんの学生に知ってもらおうと、チラシを作って、配った。

立命館大学のホームページ
HEADLINE NEWS:「100円朝定食」提供をプレスタート!
http://www.ritsumei.jp/news/detail_j/topics/12259/year/2013/publish/1

そして、いよいよ100円定食が実現する
1日目は150食と普段の1.5倍。
2日目以降増え続け、数日で通常の3倍の300名に近づく。
100円朝食を食べた学生がツイッターで口コミを拡散。
「100円定食すごいよね~」
「100円定食、美味しい。続けて欲しい!」
話題が広まる。

そして、この100円定食が父母会の想いによって、実現したことを知り、
「これまで朝食を食べなかったのが申し訳ない」
「親の愛情を感じるよね」
とインタビューで答える学生たち。

そして、この100円定食により、
「きちんと朝早く起きるようになり、生活リズムが変わった」
「朝の授業に出るようになってきた」
「朝食が習慣になり、生活リズムが定着する」
といった生活習慣における手応えも出ている様子。

ニュースで100円定食が実現した裏話を知り、感じたことは3つあります。

1つ目は、ビジネスのスタートはやはり「想い」だということ。
「想いは手法の上流にあり」という言葉がありますが、思いさえあれば、
はじめは素人考えだっていいのです。往々にしてスタートはそういうものであり、
想いを実現するために試行錯誤しながら、形作っていけばいいのです。

2つ目は、母親の子供への愛情の深さです。
私も母親に同じように心配してもらっていたのでしょう。私はそんなことを知らずに、
のんきに学生生活を送っていましたので、今になって母親という存在にありがたみを
感じるようになりました。私に限らず、日本では多くの家庭で同じような構図が
成り立っているのでしょう。

3つ目は、中長期的に考えて、このサービスは本当に必要なのだろうかという疑問です。
確かに子どもを心配する親、安くご飯を食べたい子どもの両方のニーズを満たす
サービスではありますが、同じように親と子どものニーズを満たすサービスが他にも
次々と実現していくと、極端な話、学生の自律を妨げてしまうような気がします。
親は子どもに対してどんどん過保護になり、楽をしたい子どもは親に依存してしまう。
そんな関係をより強固なものにしてしまうかもしれません。

このコラムを書いた後、ネットでこのニュースについて調べると、
同じニュースを見た人がこんな投稿をしていました。

都内の私立大学一年生の娘を持つ母親です。100円朝定食を涙ながらに見ています。
我が子は自宅からまがりなりにも手料理を毎日食べて、食べさせるほうも食べるほ
うも当たり前に思っていましたが親元を離れ通っている学生さんの、食べさせたく
ても食べさせられない親御さんの気持ちも初めて感じました。素晴らしい企画です。
我が子の大学でも真似てほしいです。

地方公立大学に通う学生です。100円朝食、食生活の不規則な学生にとってはとても
良いと感じました。それと同時に、大学も時代とともに質の高いサービスの提供が求
められているのだと実感しています。しかし、多くの時間がある大学生活の中で、不
規則な食生活になってしまう…すなわち、自己管理が行き届かない、ということにな
れば、社会に出た際にはどうしていくのだろうと疑問に思います。会社にはもちろん
朝定食などありません。自分の食生活は自分で作っていく必要があります。今後、さ
らに大学側は質の高いサービスを提供していくことが予想されます。そのような中で、
大学の質の高いサービス、学生の親の干渉が、逆に学生の自立は妨げていくような気
がしてなりません。自分の食生活は自分でつくるといったことも、学生生活の醍醐味
ではないでしょうか?今後このような学生生活の醍醐味の多くが奪われ、自立の場が
失われていくような気がします。

さて、どんな未来が待っているのでしょうか。
100円定食の今後を見守りたいと思います。

今年もコラムをお読みいただき、ありがとうございました。
来年も宜しくお願い申し上げます。

コンサルタント

辻 勇作

Tsuji Yusaku

辻 勇作

1978年生まれ。奈良県出身。

経歴

新卒で経営コンサルティング会社に入社。アウトプレースメント事業、自動車関連の新規事業立ち上げを経験後、社内人事として評価制度改訂・採用方法の刷新など組織変革を推進。7年半勤務後、2009年12月アッシュ・マネジメント・コンサルティングに入社。

コンサルティング・ポリシー

『人の可能性を最後まで信じる』

コンサルティング実績(得意分野)

  • ◆サーベイに基づく経営者に対する事業構想研修
  • ◆新規事業の黎明期における営業活動の基盤づくり
  • ◆同行による密着型の営業力強化支援
  • ◆ベンチャー企業における“重たくない”人事評価制度の策定

当社での役割

  • ◆明石家さんまを彷彿とさせる常人離れした関西ノリのリアクションで平堀と小川をその気にさせること
  • ◆小川がブレークダウンしたタスクを粛々と消化し、納品物に仕立て上げること(一番汗をかいてます!)
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