#61
心を揺さぶられたビジョン
先日、打ち合わせ終了後の雑談の際に、クライアントの社長に
今後のビジョンについて聞きました。
その社長は、現在71歳で、来年の春には後継者に
代表権をバトンタッチする予定です。
人は年齢を重ね、自分の人生の先が見えてしまった時に、
「俺の人生の残り時間から考えると、これくらいしかできそうに
ないな」と寂しさを感じるとともに、意欲の減退を感じる人が
いるようです。
しかし、この社長からは、そんなことは微塵も感じません。
むしろ、まだまだチャレンジしようという姿勢と意欲を感じます。
以下が、社長からお聞きしたビジョンです。
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「辻さん、私はね、91歳と3ヶ月まで生きることを決めてるんですよ。
私の誕生日は7月10日なので、私が91歳になるのは、2034年7月10日です。
私が死ぬのは、その3ヶ月後の10月10日です。
カレンダーにその日を記入しています。
なぜ、その日にしたかというと、私の父が91歳と2ヶ月生きたので、
私は少しでも父を超えたいと思い、その日まで生きることを決めました」
「死んだ後、私があの世に行く時に、
お父さんとお母さんがゼウスのごとく、手を差しのべて、
『よくやったな』と声をかけてくれる。
私は、両親の手を握り、『俺、やったよ』と答えたいんです。
このビジョンを描くと『死にがいがあるな~』と思って、
今を前向きに生きれるんです」
「父は、年を取ってから事業を立上げ、時流に乗り遅れないように
様々な勉強をし、工夫を重ね、会社を発展させてきました。
49歳で子供を作り、65歳で車の免許を取りました。
父は年を取っても、常にチャレンジしてきた人生でした。
自分自身の人生と父の人生を振り返った時、
ふと、『父に負けない人生を送ろう』と思いました。
そして、父に負けない、誇りを持てる人生にしようと思うと、
代表から引退しても、自分の好き勝手に過ごしたり、怠けたり
してられないんですよね」
「自分が残りの20年でやっていきたいことは、自分が経験し、
学んできたことを後世に残すことです。
これまでかなりの時間とお金を使い、学んできました。
採用と教育にこの10年間で約3億円くらい使ってきました。
不器用だったので、人一倍いろんな経験をしたと思います。
それら経験と教訓をきっちりと整理して、生かせるようになれば、
この会社はもっと大きくなれるし、もっと良い会社になれる。
自分が得たものをきちんと伝えたいんです。ハチャメチャだった
自分が、学ぶことによって人生を変えることができました。
今の社員ももっと豊かな人生にしていけると思うんです」
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この話を聞き、鳥肌が立ちました。(特にゼウスのくだり)
自分の人生を見つめ直し、本当にやりたいことや使命を感じることを
ビジョンにすることで、日々の生活や仕事への取組み姿勢を変える。
この社長の経営の真骨頂を垣間見た気がします。
そして、このビジョンをお聞きし、改めてこの社長のことを
熱烈にサポートしたくなりました。
そして、2034年10月10日、社長が亡くなられた時に、
「社長、お父さんとお母さんに『よくやったな』と迎え入れてもらえて
良かったですね。私も微力ながら、社長の力になれたなら、嬉しいです」
と見送りたいと思います。
ビジョンの重要性を感じた出来事でした。