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人事評価制度のメリット・デメリットとは? 中小企業が制度づくりでしくじらないための考え方

8月17日
読了時間: 17分

更新日:59 分前

メリットとデメリット

監修:小川 晴寿(おがわ はるひさ/株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティング)


中小企業の理念策定・浸透と、人事評価制度の「運用・定着」を専門に組織づくりを支援。理念浸透型人事評価制度「SHIMILE(シミル)」提唱者。



はじめに|人事評価制度をつくれば、会社の問題は解決するのか

「昇給や昇格の理由を、社員にきちんと説明できるようにしたい」

「頑張っている社員が報われる会社にしたい」

「管理職に、もっと部下の育成に向き合ってほしい」


人事評価制度の導入や見直しを検討する経営者から、こうした相談をよく受けます。


では、人事評価制度をつくれば、これらの問題は解決するのでしょうか。残念ながら、そう簡単ではありません。評価基準を明確にしたことで自分の評価に納得できない社員の不満が増える。評価項目を細かくした結果、管理職が評価業務に追われる。そんなことも実際に起きています。


人事評価制度には、社員への期待を明確にし、処遇の納得性や人材育成につなげられるメリットがあります。一方、運用を誤れば、不公平感や管理職の疲弊、挑戦意欲の低下を招くデメリットもあります。メリットとデメリットを分けるのは、制度があるか、ないかではありません。何のために導入し、誰が、どのように運用するかです。


本記事では、人事評価制度のメリットとデメリットを整理したうえで、経営資源に限りのある中小企業が制度づくりでしくじらないための考え方を、現場の実態に即して解説します。



1.そもそも人事評価制度とは何か

1.そもそも人事評価制度とは何か

人事評価制度とは、社員の仕事上の成果、能力、行動や姿勢を一定の基準に基づいて評価し、その結果を昇格・昇給・賞与、人材育成などに活用する仕組みです。


単に社員に点数や順位をつけるものではなく、会社が社員に何を期待し、その働きや成長をどのように捉えるのかを明らかにする役割があります。


1-1.世界最古級の人事評価制度でも「好き嫌い」が問題になった

人事評価制度の起源をたどる際、世界最古級の事例として紹介されるのが、3世紀の中国・魏王朝で導入された「九品官人法」です。


これは、中正官が官僚候補を評価し、九つの等級に分類する仕組みでした。現代企業の人事評価とは異なりますが、人を一定の基準で評価し、登用につなげる仕組みという意味では、遠い祖先といえるでしょう。


興味深いのは、当時すでに「評価者が功績ではなく、自分の好き嫌いで人物を評価している」という批判が残されていることです。評価者によって甘い、辛いが生じる。目立つ人や、自分と考え方の近い人を好意的に見る。現在と同じ問題が、約1800年前にも起きていたのです。


人事評価制度の歴史は、評価を公平にしようとする試行錯誤の歴史でもあります。


1-2.近現代における人事評価制度の主流の変遷

日本企業の人事評価制度も変化してきました。長期雇用を前提とした時代には年齢や勤続年数を処遇に反映する年功的な運用が広く行われ、その後、知識や技能、仕事を遂行する能力を基準とする職能資格制度が普及します。


バブル崩壊後には成果主義を取り入れる企業が増えましたが、短期的な数字が重視され、陰の貢献や人材育成が軽視される問題も生じました。


現在は、成果だけ、能力だけと一つの要素に偏るのではなく、成果・能力・行動などを組み合わせて評価する企業も多くなっています。


万能な評価方法が発明されたわけではありません。一つの問題を解決すると、別の問題が生まれる。その繰り返しです。


1-3.人事評価を構成する3つの評価

一般的な人事評価は、「情意評価」「能力評価」「業績評価」の3つから構成されます。


情意評価は、規律性、責任性、協調性、積極性など、仕事に取り組む姿勢や態度を評価します。能力評価は、仕事に必要な知識、技能、判断力、企画力、マネジメント力などの能力の発揮度合いを評価します。業績評価は、一定期間の目標達成度や生み出した成果を評価します。数値で確認しやすい反面、目標の難易度や外部環境を考慮しなければ、かえって不公平になります。


自社が社員に何を期待するのかによって、3つの評価の比重や組み合わせ方が異なります。


1-4.人間が人間を評価する以上、不平や不満はなくならない

項目をどれだけ増やしても、評価するのは人間です。全社員が満足する、完全に公平な制度はつくれません。重要なのは不満をゼロにすることではなく、会社の期待、評価の事実、処遇の理由を説明できることです。


人事評価制度に必要なのは、完璧な評価ロジックではなく、説明と対話、そして運用しながら修正し続ける姿勢です。



2.人事評価制度の5つのメリット——その効果は本当か

2.人事評価制度の5つのメリット——その効果は本当か

人事評価制度を導入する主なメリットは、以下の5つです。


<人事評価制度の5つのメリット>

①昇格・昇給・賞与について説明責任を果たせる

②給与や等級を、より客観的に決められる

③経営理念・行動指針を浸透させられる

④会社が社員に期待することを明確にできる

⑤上司と部下のコミュニケーションを促進し、人材育成を仕組み化できる


①昇格・昇給・賞与について説明責任を果たせる

最も現実的なメリットは、昇格・昇給・賞与についてアカウンタビリティ、すなわち説明責任を果たせることです。


制度がなければ、社員から「なぜこの昇給額なのか」「なぜあの人が昇格したのか」と質問されたときに、「総合的に判断した」といった曖昧な説明しかできません。


全員が賛成しなくても、判断根拠を説明できれば、「何を基準に決めたのか分からない」という不信感は減らせます。


②給与や等級を、より客観的に決められる

中小企業では、社員の給与や等級を社長が一人で決めることも珍しくありません。判断基準が社長の頭の中にしかなければ、社員からは好き嫌いで決めているように見えます。


人事評価制度によって共通の基準を設ければ、社長の「お手盛り人事」を抑制できます。


完全に客観的にはなりません。目指すのは主観をゼロにすることではなく、恣意的な判断を減らすことです。


③経営理念・行動指針を浸透させられる

経営理念や行動指針を掲げても、それだけで社員の行動は変わりません。額に入れて掲げ、朝礼で唱和しても、日々の仕事と結びつかなければ、それはやがて風景になります。


理念や行動指針を具体的な評価項目に落とし込むことで、会社が大切にする価値観を日常の行動につなげられます。


例えば「挑戦」を掲げるなら、新しい提案や行動を評価する。「協働」を掲げるなら、他部署への支援も評価する。大切だというのであれば、実践した社員を評価する必要があります。


④会社が社員に期待することを明確にできる

「もっと主体的に」「管理職らしく」と言われても、社員には具体的に何をすればよいのか分かりません。


等級、役職、職種ごとに期待する成果・能力・行動を言語化すれば、会社が求めていることを明確にできます。社員にとっても、現在地と次の等級へ進むために必要なことが見えやすくなります。


制度づくりは、経営者の頭の中にある「仕事ができる人」を言葉にする営みでもあります。


⑤上司と部下のコミュニケーションを促進し、人材育成を仕組み化できる

目標設定や評価面談によって、上司と部下が期待する成果、強みや課題、今後のキャリアを話す機会をつくれます。


面倒見のよい上司の熱意だけに任せず、必要な対話とフィードバックを仕組みにできることはメリットです。


ただし、評価面談は実施するだけでは十分ではありません。評価の納得感を高め、次の行動につなげるには、評価の根拠を伝えたうえで、部下との認識を丁寧にすり合わせる必要があります。


具体的な面談の流れや質問の組み立て方については、アルー株式会社の「フィードバック面談の進め方・質問例」も参考になりますのでぜひご覧ください。


2-1.ネット記事で目立つその他のメリット

ここまで挙げた5つのほかに、人事評価制度には次のようなメリットがあると説明されることがあります。

  • ・スキル管理・タレントマネジメントの強化

  • ・生産性の向上

  • ・社員のモチベーション向上

いずれも理屈としては理解でき、実現している企業も存在します。


しかし、それが新しい人事評価制度を導入した効果かといえば、甚だ疑わしいでしょう。


2-2.制度を導入しただけで、組織はそこまで変わらない

私がこれまで人事評価制度の構築や運用を支援してきた経験からいえば、新しい制度を導入したことによって、タレントマネジメント、生産性、モチベーションが明確に向上したと言える企業は、ほとんどありません。


評価データを集めても配置や育成に使われない。目標を設定しても期末まで見直されない。高く評価しても、給与原資がなければ大幅な昇給はできない。これが多くの中小企業の現実です。


これらができている企業は、制度導入以前から経営者や管理職が社員をよく見て、対話し、必要な支援を行っています。


もともとマネジメントが機能しているから、評価制度も有効に使えている可能性が高いのです。


評価制度の導入と、タレントマネジメント、生産性、モチベーションの向上を、安易に因果関係で結んではいけません。人事評価制度の現実的なメリットは、説明責任、恣意的な人事の抑制、理念浸透、期待の明確化、コミュニケーションと育成の仕組み化という、先に挙げた5つだと私は考えています。



3.人事評価制度がもたらす6つのデメリット

3.人事評価制度がもたらす6つのデメリット

メリットは丁寧に運用した先で表れますが、デメリットは導入直後から発生するので厄介です。


人事評価の導入にあたって注意しなければならないデメリットは以下の6つです。


<人事評価の6つのデメリット>

①運用に相応の時間がかかり、生産性を悪化させる

②社員の不平不満はなくならず、新しい不満が生まれる

③評価される行動だけが強化される

④管理職の評価能力不足が露呈する

⑤管理職が評価業務によって疲弊する

⑥手間だけが増え、社員のモチベーションが下がる可能性がある


①運用に相応の時間がかかり、生産性を悪化させる

目標設定、自己評価、上司評価、コメント作成、評価会議、評価面談など、多くの業務が発生します。項目や回数を増やすほど工数は大きくなり、本業を抱えるプレイングマネージャーには相当な負担です。


生産性向上を掲げて導入した人事評価制度が、評価業務を増やし、組織全体の生産性を下げる。冗談のようですが、十分に起こり得る話です。


②社員の不平不満はなくならず、新しい不満が生まれる

制度導入前の「何を基準に評価されているのか分からない」という不満が減っても、「上司によって評価が違う」「この項目は自分の仕事に合わない」といった新しい不満が生まれます。


制度が評価差を可視化するからです。不満をなくすために導入した制度が、かえって不満の理由を具体化し、その解像度を上げることがあります。


③評価される行動だけが強化される

人は評価される行動を取ります。裏を返せば、評価されない行動を取らなくなるということです。


売上を重視すれば売りやすい商品を優先し、自部門の成果を評価すれば他部署の支援を避ける。人は評価項目に適応します。


見落とされやすいのが、トラブルを防いだ人、同僚を助けた人、誰もやりたがらない仕事を引き受けた人です。縁の下の力持ちや陰のヒーローの貢献は記録に残りにくいのです。


評価される仕事だけが選ばれ、助け合いが減れば、職場の雰囲気が悪くなる可能性は高まります。


④管理職の評価能力不足が露呈する

制度の導入によって、管理職には、部下の仕事を把握し、事実に基づいて評価し、根拠を説明することが求められます。しかし、評価者として必要な能力が身についていないと、部下の仕事を見ていない、基準を理解していない、厳しい結果を伝えられない、といった問題が一気に表面化します。


上司が評価者になった途端に立派になるわけではありません。説明できない評価は、上司や会社への不信感を生みます。


⑤管理職が評価業務によって疲弊する

能力があっても、時間がなければ丁寧な評価はできません。


中小企業の管理職は、自分の担当業務に加え、部下の指導、会議、採用なども担っています。そこへ評価業務が追加されます。


締切直前にコメントを書き、前年の文章を少しだけ変え、評価面談では最終評価コメントを読み上げるだけになる。管理職の怠慢というより、制度と現場の処理能力が合っていない可能性があります。


部下と向き合う制度が、その余裕を奪い、職場の雰囲気にも波及します。


⑥手間だけが増え、社員のモチベーションが下がる可能性がある

新しい制度が始まると聞けば、社員は「頑張りが給与に反映される」「上司が仕事を見てくれる」と期待します。


しかし、記入と面談が増えただけで、給与も育成も上司の関わり方も変わらなければ、「結局、何のための制度なのか」と感じます。


双方に徒労感が残り、モチベーション向上を掲げた制度が、かえってモチベーションを下げます。



4.メリットとデメリットは、同じコインの表と裏である

4.メリットとデメリットは、同じコインの表と裏である

人事評価制度のメリットとデメリットは、別々の場所から生まれるのではありません。同じ仕組みが、目的や運用によってメリットにもデメリットにもなります。

人事評価制度の働き

メリット

デメリット

評価基準を明確にする

昇格・昇給・賞与の理由を説明できる

評価基準や他者との差が見え、新しい不満が生まれる

共通の基準で評価する

社長のお手盛り人事を抑制できる

評価者の能力不足や主観によるばらつきが露呈する

理念や行動指針を評価項目にする

経営理念・行動指針を日常の行動へつなげられる

評価される行動だけが強化され、陰の貢献が軽視される

等級や役職ごとの期待を言語化する

会社が求める成果や行動を明確にできる

評価項目に書かれていない仕事や助け合いが軽視される

目標設定や評価面談を行う

上司と部下の対話を促進し、人材育成を仕組み化できる

運用に時間がかかり、管理職が疲弊する

評価情報を蓄積する

スキル管理やタレントマネジメントに活用できる可能性がある

データを蓄積するだけになり、手間と管理コストが増える

成果や目標達成度を評価する

生産性の向上が期待される

評価業務が増え、かえって生産性を下げる可能性がある

評価結果を処遇や称賛につなげる

社員のモチベーション向上が期待される

低い評価や何も変わらない運用によって、モチベーションが下がる


4-1.メリットとデメリットは別々に発生するのではない

評価基準の明確化は説明責任を果たしやすくする一方、評価差を可視化します。理念を評価項目にすれば望む行動を促す一方、書かれていない貢献が軽視されます。評価面談は対話を促す一方、管理職と社員の時間を奪います。


つまり、コインの表だけを手に入れることはできません。メリットを得ようとすれば、同時にデメリットが生まれる可能性も引き受けることになります。


どちらに転ぶかを左右するのは、制度の目的、設計、評価者の能力、そして日々の運用です。


4-2.メリットよりもデメリットの方が出現しやすい

しかも、メリットとデメリットの出現確率は同じではありません。私は、デメリットの方がはるかに出現しやすいと考えています。


説明責任を果たすには、期待事項を言語化し、評価者が仕事を把握し、事実に基づく判断を説明しなければなりません。理念浸透や育成には日常的な対話も必要です。


一方、デメリットは一つの不備から生まれます。評価項目が多ければ管理職が疲弊し、説明が不十分なら不信感が生まれる。運用を始めれば、工数だけは確実に増えます。


メリットは努力して実現するものですが、デメリットは何もしなくても発生します。


経営者はコインの裏側まで理解し、それでも導入する必要があるのかを判断しなければなりません。



5.中小企業が人事評価制度のデメリットを最小化する3つのポイント

5.中小企業が人事評価制度のデメリットを最小化する3つのポイント

デメリットはゼロにできませんが、目的と仕組みを絞れば小さくすることはできます。


<デメリットを最小化する3つのポイント>

①メリットの中心を「モチベーション向上」ではなく「アカウンタビリティ」に置く

②管理職の能力と負荷から逆算して制度を設計する

③経営判断による処遇調整の余地を残す


①メリットの中心を「モチベーション向上」ではなく「アカウンタビリティ」に置く

給与原資が限られる中小企業が、バラ色の昇給をニンジンにして社員のモチベーションを上げるのは無理があります。


制度説明会で「頑張った人が報われる制度です」「モチベーションが上がります」と力説しても、十分な昇給原資を準備できず、評価の高い社員と低い社員の昇給差がわずかであれば、社員は白けるだけです。


すべての社員を満足させられなくても、昇格・昇給・賞与の理由を説明できない状態は看過できません。


中小企業が人事評価制度に求める第一のメリットは、モチベーション向上ではなく、アカウンタビリティです。


「社員をどこまでやる気にさせるか」ではなく、「会社の判断をどこまで誠実に説明できるか」。ここに目的を置きます。


②管理職の能力と負荷から逆算して制度を設計する

制度設計では、能力も情意も、理念も、中間面談も、と要素を加えたくなります。


しかし、評価の種類も、項目数も、評価頻度も、担当する被評価者の人数も、すべて管理職の手間となって返ってきます。


理想の制度を先に描くだけでなく、評価者が投下できる工数から逆算して、現実に運用できる制度へ絞り込むべきです。


また、管理職の負担を考える際は、評価業務だけでなく、周辺業務が特定の人に集中していないかも確認する必要があります。業務の流れを可視化し、担当者と役割分担を明確にすることは、属人化を防ぎ、現場で無理なく運用できる体制づくりにつながります。


一人の管理職が十人の部下を十項目で評価すれば、それだけで百項目です。そこに目標設定、コメント、面談、評価会議が加わります。精緻な制度ほど、丁寧に向き合えるとは限りません。


項目を減らす。回数を見直す。担当人数を抑える。事務局が支援する。フルスペックより、現場が回る仕組みを選ぶべきです。


制度に管理職を合わせるのではなく、現在の管理職が理解し、説明し、継続して運用できる制度から始める。管理職が成長したら、制度を少しずつ進化させていくシナリオも「あり」ということです。


さらに詳しく確認したい場合は、以下の記事をあわせてご覧ください。



③経営判断による処遇調整の余地を残す

評価点に一定の係数を掛ければ昇給額や賞与額が自動的に決まる。そんな精緻な仕組みをつくれば、公平になるように見えます。


しかし、計算式どおりに処遇を決めることが、常に経営として正しいとは限りません。


評価結果が経営者の実感と異なることもあります。給与バランス、採用条件、市場価値、将来への期待、退職リスク、会社の原資なども無視できません。


評価表と計算式だけでは捉えきれない事情が、経営にはあります。


そこで必要になるのが、少し格好よくいえば「経営判断による処遇調整の余地」、平たくいえば「鉛筆なめなめ」です。


経営者・経営陣が最終調整できる余地があれば、評価結果を計算式どおりに処遇へ反映させることで生じる、無理や矛盾を避けられます。計算式から導かれた不自然な結果を守るために、誰も納得しない処遇を強行する必要はありません。


ただし、「鉛筆なめなめ」は、社長の好き嫌いで評価点を書き換えることではありません。それでは、第2章で否定した「お手盛り人事」に逆戻りします。


評価結果と最終的な処遇決定を分けます。評価は基準と事実に基づいて行い、制度では捉えきれない経営上の事情を加味して処遇を決めます。


そして、調整したのであれば、なぜ調整したのかを会社として説明できなければなりません。


鉛筆をなめてもよい。しかし、なぜなめたのかは説明できなければならない。制度が原則を示し、経営が例外に向き合う。その両方が、中小企業の人事評価には必要です。



まとめ|人事評価制度は、導入すれば自動的に会社が良くなる仕組みではない

まとめ|人事評価制度は、導入すれば自動的に会社が良くなる仕組みではない

人事評価制度には、説明責任、恣意的な人事の抑制、理念や期待事項の言語化、対話や育成の仕組み化といったメリットがあります。


一方、運用には時間がかかり、新たな不満も生まれます。管理職が疲弊し、手間だけが増えれば、社員のモチベーションはむしろ下がります。


メリットとデメリットは、同じコインの表と裏です。しかも、メリットを実感できるまでには相応の時間がかかりますが、デメリットはあっという間に表れます。


だからこそ、中小企業では、モチベーション向上を過度に期待せず、まずは会社が処遇について説明責任を果たせる状態を目指すべきです。管理職の能力と負荷から逆算し、継続して運用できる制度を設計する。そして、評価結果を機械的に処遇へ反映するのではなく、説明可能な経営判断によって調整できる余地を残す必要があります。


大切なのは、立派な制度をつくることではありません。自社の言葉で説明でき、無理なく運用でき、必要に応じて修正できる制度をつくることです。


人事評価制度をつくった会社が「いい会社」になるわけではありません。自社の限界を理解したうえで、社員に判断の理由を誠実に説明し続けられる会社が、「いい会社」に近づいていくのです。



この記事の監修 株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティング(HMC)


監修:小川 晴寿(おがわ はるひさ/株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティング)


中小企業の理念策定・浸透と、人事評価制度の「運用・定着」を専門に組織づくりを支援。「原理原則に基づいて経営をする“いい会社”を増やす」を掲げ、理念浸透型人事評価制度「SHIMILE(シミル)」、社員の意志に火をつける「Will Management」を体系化。(本記事は自社の構築支援資料および代表著書『Hな経営』の知見をもとに構成)


HMC公式サイト:https://h-mbo.com/

 
 

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