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気になる! 隣りの会社の人事の仕組み|アンケート調査レポート|有休が取れる職場・取れない職場

  • 6 日前
  • 読了時間: 13分

更新日:5 日前

『有休を取りたいな』と思うものの、やるべき仕事は次々と舞い込んでくるし、上司や同僚は忙しく仕事しているし…という現状を前にして、申請をためらってしまう経験をした人は少なくないでしょう。

日本に年次有給休暇の制度ができたのは、1947年の労働基準法の成立のときでした。それよりも前の1936年に国際労働機関が採択した「年次有給休暇に関する条約」には『1年間の勤務継続で、最低6日以上の“連休”を付与する』と定められていましたが、戦後の復興が急務だった当時の日本では、『6日間も連休を取る余裕はない!』との理由で条約には批准せず、独自の原則を設けるに至りました。つまり、日本の有休制度のルーツそのものが「忙しくて休めない」という問題と深く関わっていたのです。

それから80年ほど経った現在、有休の取得を取り巻く現状に変化はあったのでしょうか。

 

そこで今回は、企業で働く20~50代の社会人を対象に「有休の取得率と取りやすさ」を調査し、その結果をご紹介いたします。

 

※本記事の編集にあたり、1000名を対象にアンケートを実施しました。質問の内容は「あなたの会社の有休取得を促す取り組みは何ですか?」「2025年度のあなたの有休取得率はどれくらいですか?」「あなたの会社はどのくらい有休を取りやすいですか?」「有休を取りやすい/取りにくい理由は何ですか?」です。また、「勤務先の従業員数」「勤続年数」にも回答いただき、有休取得率などの詳しい傾向の分析に用いました。記事内では有効回答として得られた939名の回答の集計結果を公開させていただきます。


 

1.     有休取得を促す取り組み

初めに、「あなたの会社で実施されている『有休取得を促すための取り組み』はどんな内容ですか?」に対して挙げられた回答を見てみましょう。設問では『特別休暇』『計画的付与』など12通りの選択肢から該当するものを1つ以上選んでいただきました。回答を得票数の多い順に並べた結果は以下の通りです。

 

【グラフ1】有休取得のための取り組み

 

【グラフ1】を見ると、有休取得を促す取り組みとして最も多かったのは『とくになし』で385件でした。有休取得が法定義務化されているにもかかわらず、具体的な取り組みを行っていない企業が一定数あることが分かります。

 

一方、『とくになし』を除くと、最も多かったのは『計画的付与』で268件、次いで『取得目標の設定』が212件、『時間単位・半日単位』が192件となっています。これらはいずれも、有休を取得する機会やきっかけを制度として整える取り組みです。

 

中でも『計画的付与』は、会社側があらかじめ有休取得日を組み込めるため、他の取り組みに比べて取得実績につながりやすい施策です。社員の自主的な申請だけに委ねるよりも、確実に有休取得を進めやすい点では、非常に有効な取り組みだと言えます。

 

ただし、計画的付与は、単に会社が一方的に休暇日を指定すればよいというものではありません。計画的付与の対象にできるのは、労働者が自由に取得できる年5日分を除いた残りの日数です。そのため、すべての有休を会社側が計画的に割り振ることはできません。

 

また、計画的付与を実施する場合には、労使協定を締結し、対象者、対象日数、具体的な付与方法などを定めておく必要があります。業務状況やメンバーの勤務状況を踏まえて調整する施策だからこそ、雇用者と労働者の双方が納得できるルールとして整備しておくことが重要です。

 

なお、計画的付与によって取得した年次有給休暇も、年5日の取得義務の対象としてカウントされます。したがって、制度を正しく運用できれば、有休取得実績を高めるうえで有効な手段となります。

 

一方で、注目すべきは、「休んでも業務が回る体制」が86件にとどまっている点です。有休取得を促すには、取得目標を設けたり、半日単位で取得しやすくしたりすることも重要ですが、社員が実際に休む際には、「自分が休んでも仕事が止まらないか」「同僚に過度な負担がかからないか」という不安が大きな障壁になります。

 

つまり、グラフ1から読み取れるのは、多くの企業で有休取得を促すための制度的な取り組みは行われているものの、実際に社員が安心して休める業務体制の整備までは十分に進んでいないということです。

 

「有休を取りましょう」と呼びかけることや、取得目標を設定することは大切です。しかし、休んだ分の業務を誰がどのようにカバーするのかが曖昧なままでは、社員は結局、周囲への遠慮や休暇後の業務負担を考えて取得をためらってしまいます。

 

その意味で、有休取得を本当に進めるためには、制度の導入だけでなく、「休んでも業務が回る状態」をどのようにつくるかが重要になります。グラフ1は、有休取得に向けた取り組みが“制度づくり”から“業務設計”へ進む必要があることを示していると言えます。


 

2.     有休の取得率と取りやすさ

有休の取得を促す取り組みについて解説しましたが、有休の取得率や取りやすさは実際に向上しているのでしょうか?また、先ほども述べた「企業規模と有休の相関関係」は、取得率と取りやすさにどれくらいの違いをもたらしているのでしょうか?

 

そこで、まずは「2025年度において、あなたの有休の取得率はどれくらいですか?」に対して4つの選択肢の中から1つを選んでもらった結果を、従業員数別に比較してみましょう。

 

【グラフ2】有休の取得率

 


【グラフ2】を見ると、全体では「100%」が17.5%、「50~99%」が34.6%となっており、回答者の52.1%が有休を半分以上取得していることが分かります。一方で、「1~49%」は33.5%、「0%」は14.4%であり、半分未満にとどまっている人も47.9%に上っています。

 

従業員数別に見ると、企業規模が大きくなるほど有休取得率が一貫して高くなる、という単純な比例関係は見られません。例えば、「100%」取得している人の割合は、1001人以上の企業で25.3%と最も高い一方、51~100人規模でも20.1%となっており、301~1000人規模の16.4%を上回っています。

 

ただし、「半分以上取得している人」の割合に注目すると、企業規模による違いが見えてきます。1001人以上の企業では63.0%、301~1000人規模では56.0%、101~300人規模では49.7%、51~100人規模では50.0%であるのに対し、1~50人規模では39.3%にとどまっています。

 

つまり、有休取得率は企業規模に完全に比例するわけではないものの、1~50人規模の企業では、他の規模と比べて有休を十分に取得できていない人が多いことが分かります。特に「0%」の割合は、1~50人規模で23.7%と最も高く、1001人以上の9.2%と比べると大きな差があります。

 

この結果から、小規模企業では、有休制度そのものは存在していても、実際には取得しにくい状況が残っている可能性が高いと考えられます。背景には、人員の少なさ、業務の属人化、代替要員の不在、休んだ際に周囲へ負担がかかることへの遠慮などがあると推察されます。

 

したがって、グラフ2から読み取れるのは、「大企業ほど必ず有休が取れる」ということではありません。むしろ重要なのは、一定の人員規模を下回ると、有休取得が個人の希望や意識だけでは進みにくくなるという点です。特に1~50人規模の企業では、有休取得を促すために、制度の周知だけでなく、取得を妨げている職場側の要因にも目を向ける必要があると考えられます。

 

続いて「あなたの会社では、有休の取りやすさはどれくらいですか?」に対して、4つの選択肢の中から選んでもらった結果も、従業員数別に比較してみましょう。

 

【グラフ3】有休の取りやすさ

 

【グラフ3】を見ると、全体では「非常に取りやすい」「どちらかと言えば取りやすい」を合わせた割合が64.1%となっており、約3人に2人は自社を「有休を取りやすい職場」と感じていることが分かります。

 

一方で、従業員数別に見ると、企業規模が大きくなるほど有休を取りやすく感じる、という単純な比例関係は見られません。例えば、「どちらかと言えば取りやすい」の割合は、51~100人規模の企業で54.2%と最も高く、1001人以上の企業では41.4%にとどまっています。つまり、有休の取りやすさは、企業規模だけで決まるものではなく、職場ごとの運用や上司・同僚との関係性、業務の進め方などにも左右されると考えられます。

 

ただし、注目すべきは「非常に取りにくい」の割合です。1~50人規模の企業では25.6%と、他の規模と比べて明らかに高くなっています。これに対し、1001人以上の企業では10.6%、301~1000人では11.2%にとどまっています。

 

グラフ2では小規模企業ほど取得率が低い傾向が見られましたが、グラフ3を見ると、その背景には「制度上は取得できるが、実感としては取りにくい」という職場環境があることがうかがえます。

 

この結果から、有休の「取りやすさ」は企業規模だけでは説明できないものの、有休が“非常に取りにくい”と感じる職場には、小規模企業特有の構造的な課題が影響している可能性が高いと考えられます。具体的には、人員不足、業務の属人化、代替要員の不在、休んだ際の周囲への負担感などです。

 

つまり、グラフ3から読み取れるのは、「大企業だから必ず取りやすい」「中小企業だから必ず取りにくい」という話ではありません。むしろ重要なのは、一定数の小規模企業では、有休取得が個人の遠慮や気分の問題ではなく、“休むと仕事が回らない”という構造的問題になっているという点です。

 

そのため、有休取得を促すうえでは、「有休を取りましょう」と呼びかけるだけでは不十分です。特に小規模企業では、社員本人の遠慮や意識の問題として片づけるのではなく、「なぜ休みにくい状態が生まれているのか」という業務構造に目を向ける必要があります。


 

3.     有休を『取りやすい』『取りにくい』と感じる理由

最後に、「有休を取得しやすい/取得しにくい理由は何ですか?」に対して、複数の選択肢の中から最大で3つ選んでいただいた結果を見てみましょう。今回のアンケートでは、「有休の取りやすさ」に関する質問で『取りやすい』と答えたグループ(602名)には「取得しやすい理由」、『取りにくい』と答えたグループ(337名)には「取得しにくい理由」を回答していただきました。それぞれの回答を得票数の多い順に並べた結果は以下の通りです。

 

【グラフ4-1】有休を取りやすい理由

 

【グラフ4-2】有休を取りにくい理由

 

「取りやすい理由」として最も多く挙がったのは『取得理由を詮索されないから』でした。誤解する方が多いですが、有休の取得理由を確認すること自体は違法ではありません。なぜなら、雇用者が時季変更権を行使する際に、日程調整を進める上での判断材料となる場合があるためです。しかし、申請の可否を判断するために取得理由の説明を求めることは労働者に対する権利侵害にあたります。本来ならば取得理由を詮索されないことが当たり前ですが、それでも『こんな理由で休んでいいのだろうか』と後ろめたさを感じてしまう人にとっては、その“当たり前”に救われることも多いのかもしれません。

一方、「有休を取りにくい理由」として最も多く挙がったのは『人員に余裕がないから』でした。さらに、『有休は取りにくいが、取得率が高い』グループに属する回答者の傾向を見たところ、『人員に余裕がないから』の順位は2位に下がっていました。人員不足の影響が少なければ、他の要因で取りにくさを感じてもある程度は取得可能であることが伺えます。おそらく、少人数の企業の多くは「通常業務を回せる最低限の人員はいるものの、欠員が出ると回らなくなる」という体制で運営されているのでしょう。

 

【グラフ4-1】【グラフ4-2】を比較すると、有休の取りやすさを左右する要因には、心理的な要因と構造的な要因の二層があることが分かります。

 

取りやすい理由として最も多かったのは「取得理由を詮索されないから」であり、これは社員が後ろめたさを感じずに申請できる職場風土の重要性を示しています。一方、取りにくい理由として最も多かったのは「人員に余裕がないから」であり、こちらは気持ちの問題ではなく、業務を代替できる体制そのものに課題があることを示しています。

 

つまり、有休取得を促すには、「休んでよい」というメッセージを発するだけでは不十分であるということです。社員が安心して申請できる風土と、実際に休んでも業務が回る仕組みの両方が必要です。特に人員不足や業務の属人化が残ったままでは、どれだけ取得を呼びかけても、社員は「自分が休むと迷惑がかかる」と感じてしまいます。有休取得率を高めるためには、心理的なハードルを下げる取り組みと同時に、業務分担や代替体制の整備といった構造的な改善が欠かせません。

 


4.     有休取得実績の向上に必要なこと

ここまで、各企業における有休取得に向けた取り組みと、実際の取得率、取りやすさについて、アンケート結果を基に見てきました。

 

今回の結果から見えてきたのは、有休取得を妨げている要因は、単に「社員が休むことに遠慮しているから」ではないということです。

 

もちろん、「取得理由を詮索されない」「管理職が率先して取得している」「ワークライフバランスを重視する風土がある」といった心理的な安心感は、有休の取りやすさに大きく影響します。社員が「こんな理由で休んでいいのだろうか」と感じてしまう職場では、制度があっても申請のハードルは下がりません。

 

しかし一方で、有休を取りにくい理由として最も多かったのは「人員に余裕がないから」でした。さらに、「休むと業務が回らない体制だから」「業務量が多いから」といった回答も上位に挙がっています。

 

つまり、有休取得を進めるうえで本当に問われているのは、社員の意識だけではありません。

「休んでも大丈夫」と言えるだけの業務推進体制があるかどうか。ここが、最も大きな分岐点になります。

 

「有休を取りましょう」と呼びかけることは大切です。しかし、現場の社員が「自分が休むと仕事が止まる」「同僚に負担が集中する」「休んだ後に自分の仕事が山積みになる」と感じている状態では、その呼びかけはきれいごとに聞こえてしまいます。

 

有休取得を促すためにまず必要なのは、社員に遠慮をなくさせることではなく、遠慮せざるを得ない構造を減らすことです。

 

具体的には、次のような取り組みが考えられます。

 

1つ目は、業務負荷の見える化です。

誰が、どの業務を、どのタイミングで、どの程度抱えているのかが見えていなければ、休暇取得時の調整は個人任せになります。その結果、「自分しか分からない仕事」が増え、休みにくさが固定化していきます。

 

2つ目は、業務の標準化です。

特定の人だけが分かる手順や判断基準を減らし、簡単なマニュアルやチェックリストを整備するだけでも、代替可能性は高まります。立派な業務改革でなくても構いません。まずは「この仕事は、本人がいなくても最低限ここまでは進められる」という状態をつくることが重要です。

 

3つ目は、副担当制の導入です。

すべての業務に完璧なバックアップ体制を敷くことは難しくても、重要業務や締切のある業務から順に、副担当を決めておくことはできます。副担当制は、有休取得のためだけでなく、急な病欠や退職リスクへの備えにもなります。

 

4つ目は、管理職の役割の見直しです。

有休を取りやすい職場にするには、管理職が「休んでいいよ」と言うだけでは足りません。誰が休んでも業務が回るように、日頃から仕事の偏りを把握し、調整することが求められます。有休取得は福利厚生の話であると同時に、管理職のマネジメント力が問われるテーマでもあります。

 

もちろん、これらの取り組みを進めるには、最終的には会社の収益力も重要です。収益に余裕があれば、人員を増やすことも、採用力を高めることも、業務改善に投資することもできます。その意味で、高収益化は有休取得を支える大切な経営課題です。

 

しかし、「高収益化しなければ有休取得は進まない」と考えてしまうと、多くの企業にとっては話がそこで止まってしまいます。大切なのは、今ある人員の中でも、休みやすさを少しずつ高める工夫を積み重ねることです。

 

年5日の取得義務を満たせていない企業であれば、まずは法令遵守が最優先です。計画的付与や取得推奨日の設定など、一定の強制力を持った仕組みを整える必要があります。

 

一方で、年5日の取得はできているものの、それ以上の取得が進まない企業では、次に取り組むべきは「休んでも業務が止まらない体制づくり」です。業務の見える化、標準化、副担当制、管理職による業務配分の見直しなどを通じて、「一人しかできない仕事」を少しずつ減らしていくことが重要です。

 


有休取得率を高めるために必要なのは、社員に「もっと休みましょう」と呼びかけることだけではありません。社員が安心して休める職場とは、誰か一人の頑張りに依存しすぎない職場です。

 

有休を取れる会社とは、単に制度が整っている会社ではありません。休む人にも、残る人にも、過度な負担がかからないように仕事を設計している会社なのです。

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