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社員が動かない本当の理由|指示待ち社員を生む5つの組織的原因と改善策

2 日前
読了時間: 15分
社員が動かない本当の理由

監修:小川 晴寿(おがわ はるひさ/株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティング)

中小企業の理念策定・浸透と、人事評価制度の「運用・定着」を専門に組織づくりを支援。理念浸透型人事評価制度「SHIMILE(シミル)」提唱者。


「うちの社員は、指示したことしかやらない」

「何度言っても、自分から動こうとしない」

「会議に参加しても自分から意見を言おうとしない」


中小企業の経営者や管理職から、こうした悩みを聞くことがあります。


社員には、もっと主体的に動いてほしい。

会社のことを自分事として考えてほしい。

いちいち細かく指示しなくても、少し先を読んで仕事をしてほしい。


経営者やリーダーがそう思うのは自然です。


ただし、ここで一つ注意したいことがあります。


本記事で扱う「動かない社員」とは、サボる、遅刻する、仕事を放棄するといった意味での「働かない社員」ではありません。


主に、

  • 指示待ちになる

  • 言われた範囲以上のことをしない

  • 自分から提案しない

  • 難しい判断を避ける

  • 大きな責任を引き受けようとしない


といった、「主体的に動かない社員」を指します。


もちろん、本当に仕事への意欲が低い社員が存在することも承知しています。


しかし、「動かない」という現象を本人の性格ややる気だけで説明すると、問題の本質を見誤ることがあります。なぜなら、会社の中に「動きにくい理由」があったり、さらに言えば、社員にとって「動かない方が合理的」になっていたりすることがあるからです。


この記事では、社員が指示待ちになる5つの組織的な原因と、社員が自ら動ける組織に変えるための具体策を整理します。



1.「動かない社員」と「動けない社員」は違う

「動かない社員」と「動けない社員」は違う

まず、社員が動かない状態を3つに分けて考えてみます。


1-1.そもそも動く意思がない社員


仕事に対する意欲や責任感そのものが低く、何度伝えても改善しようとしない社員です。


こうしたケースは確かにあります。


期待する役割を伝えたり、相応の支援をしたうえで、それでも変わらないのであれば、個人の問題として扱う必要があります。ただし、すべての「動かない社員」を最初からこのタイプと決めつけるのは危険です。


1-2.動きたいけれど動けない社員


本人には意欲があっても、

「どこまで自分で判断していいか分からない」

「失敗したら怒られそう」

「自分の考えに自信がない」

「今の仕事だけで手一杯」

という状態では、自発的な行動は起こりにくくなります。


このタイプの社員に「もっと主体的に動いてほしい」と言っても、精神論で終わる可能性が高いです。


1-3.「動かない方が得だ」と学習した社員


最も注意したいのがこのタイプです。


入社当初は積極的だった社員が、数年後には何も提案しなくなる。

自分から改善案を出していた人が、「言われたことだけやります」という態度になる。


その背景には、

  • 提案したら「じゃあ自分でやって」と言われ、仕事が増えた

  • 挑戦したものの、よい結果を出せず、強く責められた

  • 成果を出したのに、期待していたように評価をしてもらえなかった

  • 前向きに仕事を引き受けていたら、自分に仕事が集中した


といった経験があるかもしれません。


人は会社の理念やビジョンより、実際に何が報われ、何が損になるのかを見て行動を学習します。


「主体的に動け」と言われても、動いた人が損をする会社なら、動かなくなるのはある意味で合理的です。


あなたが「動かない社員」だと思っている人は、どのタイプの社員でしょうか。


もちろん、すべての「動かない社員」が組織の問題によって生まれるわけではありません。もともと指示を受けて動くことに慣れている人や、仕事への関心が低い人もいます。だからこそ、個人の問題なのか、組織の問題なのかを見極めることが必要です。



2.社員が動かない5つの原因

社員が動かない5つの原因

2-1.そもそも仕事が関心の輪に入っていない


仕事で主体的に動くためには、そもそもその仕事や会社の課題が、本人の「関心の輪」に入っている必要があります。


能力が高くても、

「会社の売上にはあまり興味がない」

「顧客が困っていても、自分の担当外なら気にならない」

「チームの問題より、自分の仕事が終わればそれでいい」

という状態では、指示された以上の行動は起こりにくくなります。


一方で、まだ能力が十分でなくても、

「なぜこのお客様は困っているんだろう」

「この仕事、もっと効率よくできないかな」

「チーム全体で考えると、このままで大丈夫かな」

と自然に気になる人は、自分から調べたり、周囲に聞いたり、改善案を考えたりします。


難しいのは、誰でも自分の関心の輪に入っていることなら主体的になれるということです。


趣味、ゲーム、推し活、スポーツなどには驚くほど主体的なのに、仕事になると急に受け身になる人も珍しくありません。


つまり、「主体性がある人かどうか」ではなく、「仕事上の出来事を、自分の関心事として捉えられる人かどうか」が重要なのです。


そもそも仕事が本人の関心の輪に入っていなければ、「もっと主体的に」と働きかけても、なかなか行動は変わりません。


2-2.挑戦するより、何もしない方が安全


「チャレンジを大切にしている」と言いながら、社員が新しいことに挑戦し、失敗すると、「なぜ、失敗したんだ!」と過剰に責任を追及する。


あるいは、会議で改善案を出した社員に、「じゃあ、それは言い出しっぺのあなたがやって」と“言った者損”の状態をつくる。


これを見ている周囲の社員は、すぐ学習します。「主体的に動かない方が安全だ」と。


中小企業では、社長や上司の一言がそのまま組織文化になりやすいからこそ注意が必要です。


挑戦を促したいなら、失敗時の反応も含めて設計しなければなりません。


厳しさは必要です。


ただし、「挑戦を求める厳しさ」と「失敗を許さない厳しさ」は別物です。


2-3.上司が考える機会を奪っている


優秀な上司ほど、部下を指示待ちにしてしまうことがあります。


部下が相談に来る。

すると上司は、「それならA社に電話して、そのあと製造部のBさんに確認して…」と、すぐ答えを教える。


短期的には、その方が早いでしょう。


ただし、それを繰り返すと、部下は「考えるより聞いた方が早い」と学習します。


そして上司は、「うちの部下は何でも聞いてきて、自分で考えない」と不満を持つ。


少し皮肉な話です。


中小企業の管理職はプレイヤー兼任で忙しいため、部下に考えさせる余裕がないこともあります。


その現実は分かります。


だからといって、毎回長いコーチングや1on1ミーティングをする必要はありません。


「あなたはどうしたい?」と問い、相談の際には自分の意見を持つ必要があるということを認識させることが重要です。


2-4.頑張る人ほど損をする


仕事のできる社員に仕事が集まるのは、企業規模の大小を問わず起こりやすい問題ですが、「できる社員が限られる」中小企業では、その傾向は顕著です。


「○○さんなら安心だから」という理由で仕事が増えていく。


一方で、最低限しか仕事をしない社員には、難しい仕事や重要な仕事があまり割り振られない。


それなのに評価も、給与も大きな差がつかない。


このような状況が繰り返される中で、会社が社員に送っているメッセージは、「頑張る人は大変になる」です。


「頑張れば報われる」ではなく、「頑張れば負担が増える」組織では、主体性は長続きしません。


報いる方法は、給与だけではありません。


経済的報酬で報いることはできなくても、精神的報酬で報いることは可能です。


2-5.給与以上に働く理由がない


「もちろん指示された仕事はやります。でも、それ以上やる必要はありますか?」


こう考える社員もいます。


雇用契約という意味では、ある意味で合理的な考え方です。


決められた勤務時間に、決められた仕事をして、その対価として給与を受け取る。


本人の中で仕事がそこまでの位置づけであれば、

「もっと会社のことを考えて」

「自分の仕事以外にも関心を持って」

「一歩先を読んで動いて」

と言われても、「そこまで求められるなら、その分の対価は?」と思うかもしれません。


特に、

  • 頑張っても昇給幅はほとんど変わらない。

  • 昇格すると責任だけ増える。

  • 会社が成長しても自分に何が返ってくるのか分からない。

  • 努力してもしなくても評価に大差がない。


こうした状態では、社員が「給与分だけ働こう」と考えるのも不思議ではありません。


社員に給与以上の貢献を期待するのであれば、その社員にとって、給与以上に働く意味は何なのか。


「それが当たり前」「私(=経営者・管理職)はそうやって働いてきた」が通じる時代ではありません。


会社側も一度、考える必要があります。



3.なぜ中小企業では「社員が動かない」が経営問題になるのか

なぜ中小企業では「社員が動かない」が経営問題になるのか

中小企業では、一人の社員の影響が大企業より大きくなります。


社員30人の会社なら、一人で約3.3%です。


しかも、その一人が管理職なら、本人だけでなく部下全体に影響します。


さらに中小企業では、

  • 評価基準が曖昧

  • 役割分担が暗黙

  • 社長の価値観が会社のルールになる

  • 管理職がプレイヤー兼任で育成まで手が回らない

  • できる人への仕事集中が起こりやすい


といったことも起こりがちです。


「うちは家族的な会社だから」という言葉が、責任範囲の曖昧さにつながっているケースもあります。


そして人手不足です。


求人広告を出しても人は集まらず、人材紹介会社を利用すれば高額な成功報酬が発生する時代に「辞めたら次を採ればいい」と安易に考えることもできません。


だから、「社員が動かない」は単なる人事の悩みではありません。


採用、育成、評価、マネジメント、組織設計に関わる経営問題です。



4.「環境を整える」と「社員を甘やかす」は違う

「環境を整える」と「社員を甘やかす」は違う

ここまで読むと、「そこまで会社が配慮しないと社員は動かないのか」「それでは甘やかしではないか」とお考えになる経営者もいるでしょう。


私は、そうは考えません。


責任の所在を明確にしないことや、失敗しても何も振り返らないことは、確かに甘やかしです。


一方で、

  • 期待する役割を明確にする

  • 判断できる範囲を伝える

  • 挑戦を評価する

  • 考える機会を渡す

  • 頑張った人を正当に扱う


ことは、甘やかしではありません。


むしろ、責任を求めるための前提条件です。


主体性は、上司からの「あなたの自由にやっていいよ」という言葉だけでは育ちません。


期待する役割や判断の範囲を明確にし、挑戦しやすい環境を整えることが前提です。


社員に主体性を求めるなら、まず主体性を発揮できる土台を会社側がつくる必要があるのです。



5.社員が自ら動ける組織に変える5つの方法

社員が自ら動ける組織に変える5つの方法

ここまで見てきたように、社員が動かない理由は一つではありません。


だからこそ、「もっと主体的に」と一括りにして働きかけるのではなく、何が社員の行動を止めているのかを見極め、それに合った打ち手を取ることが重要です。


5-1.仕事を本人の「関心の輪」に近づける


そもそも仕事そのものに関心がなければ、主体的な行動は起こりにくくなります。


だからといって、会社がすべての社員に「仕事を大好きになってもらう」必要はありません。


大切なのは、その人が何に関心を持ちやすいのかを知り、仕事との接点を見つけることです。


たとえば、

  • 数字を見るのが好きな人には、売上や利益の改善を任せる

  • 教えることに関心がある人には、後輩育成を任せる

  • コミュニケーションが得意な人には、既存顧客のフォローを任せる

  • 仕組みを整えるのが好きな人には、業務改善を任せる


同じ仕事でも、本人の関心とつながる部分が見つかると、自分から考える余地が生まれます。


主体性を求める前に、まず「この人は仕事のどこに関心を持てそうか」を考えることです。


5-2.結果の良し悪しだけでなく、挑戦した事実も称える


社員に主体的に動いてほしいのであれば、結果だけで評価しないことが重要です。


成功した人だけを称え、失敗した人には厳しく責任を問う。そんな状態では、社員は当然、失敗しない選択をするようになります。


大切なのは、成果が出たかどうかと、挑戦したかどうかを分けて見ることです。


もちろん、結果を問わなくていいという話ではありません。


ただ、

「自分で考えて提案した」

「これまでとは違う方法を試した」

「うまくいかなかった原因を振り返り、次の改善につなげた」

こうした行動そのものは、結果とは別に評価する必要があります。


たとえば、挑戦した結果がうまくいかなかったとしても、「今回は結果にはつながらなかった。でも、自分で考えて一歩踏み出したことは評価している」と伝える。


この一言があるだけでも、社員が次の挑戦に向かう心理的なハードルは変わります。


成功した人が称賛されることに異論を唱える社員はいません。


社員が見ているのは、むしろ失敗した人がどう扱われるかです。


主体性を育てたいなら、結果だけではなく、挑戦した事実そのものを称える文化をつくることが大切です。


5-3.上司は「あなたはどうしたい?」と問い続ける


部下から相談を受けたとき、経験豊富な上司ほど、すぐに答えが見えてしまいます。


その場では、正解を教えた方が早いでしょう。


しかし、それを繰り返すと、部下は「困ったら上司に聞けばいい」と学習します。


リクルートでは、ことあるごとに「あなたはどうしたい?」と本人の意思を問うことを大切にしています。これは、一人ひとりの主体性を重視する同社の人材マネジメントを象徴する問いです。


上司が答えを出す前に「あなたはどうしたい?」と問い返す。


すぐに良い答えが返ってこなくても構いません。


大切なのは、相談するときには「自分はどう考えるのか」を持つことが当たり前だと認識してもらうことです。


上司が毎回答えを出していれば、部下は答えを待つようになります。


反対に、「あなたはどうしたい?」と問い続ければ、自分で考えてから相談する習慣が少しずつ生まれます。


主体性のある社員を育てたいなら、上司が「正解を教える人」から、部下の考えを引き出す人へ変わることが大切です。


5-4.頑張った人に適切な報酬で報いる


社員が主体的に動き、成果を出しているのであれば、その貢献には適切な報酬で報いる必要があります。


理想は、給与や賞与、昇給、昇格といった経済的報酬(=金銭的報酬)で返すことです。


ただ、中小企業では、すぐに十分な経済的報酬を用意できないこともあるでしょう。


その場合でも、精神的報酬で報いることはできます。


たとえば、

  • 「あなたのおかげで助かった」と具体的に伝える

  • 本人が希望している仕事を任せる

  • 重要プロジェクトに参画してもらい、成長機会を与える

  • 表彰などによって、社内で貢献をきちんと認める


こうしたものも、社員にとっては大切な報酬です。


労働者は、経済的報酬だけで職場を選んでいるわけではありません。給与に加えて、承認、成長、やりがい、裁量、良好な人間関係なども含めて、自分が受け取る報酬全体が大きい職場に定着しやすくなります。


だからこそ、経済的報酬を十分に出せないことを理由に、精神的報酬まで与えないのは経営の怠慢です。


ただし、ここで勘違いしてはいけません。


いつまでも「やりがい」「成長」「感謝」だけで社員を引っ張れば、やがて「やりがい搾取」と受け取られます。


精神的報酬は、経済的報酬の代わりではありません。


社員が精神的報酬によって会社に魅力を感じてくれている間に、経営者はビジネスモデルを磨き、収益性を高め、きちんと経済的報酬でも返せる会社にしていく必要があります。


頑張る人ほど損をする会社では、主体性は続きません。


頑張った人が「この会社で頑張ってよかった」と思えるだけの報酬を、経済的・精神的の両面から返すこと。


それは人事施策ではなく、経営そのものの責任です。


5-5.「給与以上に働く意味」を会社側も考える


社員に、「会社のために、もう一歩頑張ってほしい」「自分の仕事以外にも関心を持ってほしい」と期待すること自体は悪くありません。


ただし、その期待を社員側だけに求めるのは無理があります。


社員から見れば、「なぜ、そこまでやる必要があるのか」という問いがあるからです。


給与や賞与だけが答えとは限りません。


成長できる。裁量が広がる。面白い仕事に挑戦できる。顧客から感謝される。経営に近い仕事ができる。将来のキャリアにつながる。


こうしたものも、給与以上に働く意味になります。


一方で、「社員なんだから頑張って当然」「若いうちは給料より経験だ」「会社が成長すれば、いつか君にも返ってくる」だけでは、今の社員には通用しにくくなっています。


社員に給与以上の貢献を求めるなら、会社側も、「この会社で、給与以外に何を得られるのか」を言葉にし、実際の仕事や制度で示す必要があります。


そして、それでも「そこまでは求めていない」という人もいます。


その場合は、無理に高い主体性を期待するのではなく、求める役割とのミスマッチがないかを見直すことも必要です。


主体性は、気合いや精神論で引き出すものではありません。


社員側に「動く理由」があり、会社側に「動ける環境」がある。その両方がそろって、初めて自発的な行動が生まれやすくなります。



6.まとめ|社員を「動かす」のではなく、社員が「動ける会社」をつくる

社員が「動ける会社」をつくる

社員は、「もっと自分から動け」と言われただけで主体的になるわけではありません。


  • 仕事に関心を持てる

  • 挑戦しても損をしない

  • 自分で考える機会がある

  • 頑張りに対して適切な報酬がある

  • 給与以上に働く意味を感じられる


そうした条件がそろって、初めて主体性は生まれやすくなります。


もちろん、すべての「動かない社員」が組織の問題によって生まれるわけではありません。もともと指示を受けて動くことに慣れている人や、仕事への関心そのものが低い人もいます。


だからこそ大切なのは、最初から「社員一人ひとりの資質の問題」と決めつけないことです。


まずは、社員が自ら動ける環境を会社側がつくれているかを確認する。そのうえで、必要な働きかけをしても行動が変わらないのであれば、そこで初めて採用、配置、評価の問題として考えればよいのです。


社員の主体性を責める前に、一度確認してほしいことがあります。


あなたの会社では、社員が動かない方が合理的になっていないでしょうか。


社員を「動かす」のではなく、社員が「動ける会社」をつくる。


遠回りに見えて、それが最も再現性の高い方法です。



この記事の監修 株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティング(HMC)

監修:小川 晴寿(おがわ はるひさ/株式会社アッシュ・マネジメント・コンサルティング)

中小企業の理念策定・浸透と、人事評価制度の「運用・定着」を専門に組織づくりを支援。「原理原則に基づいて経営をする“いい会社”を増やす」を掲げ、理念浸透型人事評価制度「SHIMILE(シミル)」、社員の意志に火をつける「Will Management」を体系化。(本記事は自社の構築支援資料および代表著書『Hな経営』の知見をもとに構成)

HMC公式サイト:https://h-mbo.com/

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