#36
【Human Factor】
●新年あけましておめでとうございます。2011年を迎え、10日が過ぎましたが、皆さん、どのようにお過ごしでしょうか。今年も残すところ355日です。【最初が肝心】の言葉の通り、今年一年を通じて何かを変えようと思っているのであれば、この10日で何らかの行動の変化が必要なんだと思います。特に意識することなく、この10日を過ごしてしまった方は・・・。今からでも遅くありません、気づいた時が始め時、今日から何かを変えて見ましょう!
●さて、今年最初のSomething H[aʃ]、テーマは【Human Factor】です。 【Human Factor】とは、事故や災害等の発生原因における機械の故障やシステムの誤作動を除いた、誤操作等の「人的要因」とか「人的要素」を意味する人間工学の言葉です。
●いつの時代にも【Human Factor】は存在するのですが、年々、世の中が便利になるにしたがって、【Human Factor】は看過できない、重要なものになっています。例えば、「人を運ぶ」という行為、昔は籠でした。籠の担ぎ手の一人が、日頃の仕事の疲れからウトウトしてしまい、棒を落としてしまったとしましょう。この場合、仮に事故が起きたとしても、その場所が千尋の谷でもない限り、事故の範囲は相棒や乗客が負傷する程度だろうと予想されます。
●ところが現代は自動車社会。タクシーや電車、飛行機で同じことが起こったらどうなるか、わざわざ書くまでもありませんが、日航機の墜落事故(1985)やJR西日本福知山線の脱線事故(2005)に代表されるような大惨事です。
●私たちは便利で暮らしやすい社会を作るために働いています。ただし、それは僅かな【Human Factor】によって、とんでもない事故や事件、災害を引き起こす可能性を孕んでいることを認識しなければならいと思います。昔だったら、一回のダブルクリックで社内の機密情報が外部に漏洩する等ということはありえなかったでしょう。しかし、現在はその可能性がすべての人に存在くらいになっています。
●したがって、私たち一人ひとりに、製造者として、同時に使用者として、「便利で暮らしやすい社会を作ること」と「大惨事を起こす確率を下げること」の両方を追求するマインドが求められているという自覚が必要なのです。事故や災害などの安全上の問題は、得てして、人間の誤操作として片づけ、設計責任を回避する傾向がありますが、真にヒューマンエラーを防止するためには、人間の行動の特性を熟知し、人間の限界を機械やシステムがカバーするヒューマンインターフェイスをより重要視した設計と技術が不可欠なのだと思います。
●最近、仕事で飛行機に乗る機会が増えました。この原稿も博多のホテルで書いています。今回、福岡行きの飛行機に乗る前に自宅のテレビで【イランで飛行機が墜落、乗客・乗務員70人が死亡】というニュースを目にしました。まさか自分の乗っている飛行機が墜落するとは思っていませんが、世界中の飛行機も44万フライトに1回の確率では、某かの失敗をしているそうです。それに自分が当たらないとは言い切れないので、自戒と警鐘を込めて【Human Factor】というテーマでコラムを書かせていただきました、という少しチキンな落ちでした(笑)。