#25
【HONKI-本気-】
●ついこの間、年が明けたと思ったら、「あっ」という間に2月も半ば。年齢を重ねる毎に、時の経つスピードが速くなっているように感じます。プロ野球もキャンプインしたし、バンクーバー五輪も始まる、自称スポーツフリークとしては、楽しみな季節になってきました。今回の五輪で、私がもっとも注目しているのは女子スピードスケートの高木美帆さんです。週刊ダイヤモンドのコラムで二宮清純氏も書いていましたが、彼女はバルセロナ五輪の時の岩崎恭子さんにとてもよく似ています。年齢もそうですが、試合をする度に大幅に自己記録を更新しており、成長スピードの最速時期が五輪と重なったのも岩崎さんにそっくりです。有力な海外の選手がマークしたくても、そもそも情報が足りません。日本国民の期待もそこまで高くないのもプラスに働くと思います。3月にコラムを書くときには結果が出ていると思いますが、今から楽しみでなりません。
●今回のSomething H は【HONKI-本気-】について書こうと思います。「研修やセミナーで本気ってどういう意味ですか?」と問いかけた時、一番多い答えが「本当の気持ち」です。もし、本気が「本当の気持ち」という意味だとすれば、スポーツの試合や仕事でよく言われる「本気を出せ!」は、「本当の気持ちを出せ」になり、何だか溜飲が落ちません。
●では、本気とは一体どういう意味なのでしょうか? 私は「本番の気魄(きはく)」ではないかと考えています。技能や知識の習得には、「練習」と「本番」という2つの場面が存在します。圧倒的に「練習」の場面の方が多いわけですが、そこで質の高い「本気」を出せるかどうかで、技能・知識の習得度合いは格段の差を生むのです。また、本番での結果も変わってきます。
●確か「真剣」 という言葉の語源も同様だと記憶しています。真剣とは、読んで字のごとく、「真(=本物)の剣」です。剣の道を極めるために、練習の時から木刀ではなく、真剣を使った行為に由来しています。練習から、命を落とすかも知れない危険に晒されているわけですから、そりゃ「真剣」に、「本気」にもなるでしょう。
●1月29日は、弊社クライアント、船橋屋の社員である松山さんのプロボクサーとしてのデビュー戦でした。当然、知り合いなので応援する気満々で後楽園ホールに行ったのですが、心のどこかでは4回戦ボーイの試合を軽く見ていたところがあったのだと思います。ところが、まったくいい意味で期待を裏切られました。松山さんはもちろんのこと、見ず知らずの若者もの含めて、彼らの「本気」「真剣さ」に心を奪われてしまいました。
●彼らは相撲で言えば序の口です。序の口の取り組みを見ても、こんなに感動したことはありません。しかし、4回戦ボーイ達は、見事に感動させてくれました。この違いは何なのだろうか?帰りの 電車の中で、ずっとそんなことを考えて、出た答えが、練習からの「本気度」「真剣さ」の違いです。
●本気や真剣の度合いを高めるには、剣術稽古のように、どれだけ「死」を意識できるかにかかっています。「死」というと大げさですが、「やりたくてもやれない状態」、つまり「現役引退」に置き換えると受け入れやすくなるんじゃないでしょうか。ボクサーは年齢制限があったり、自分ではピンピンしていても脳や目に疾患が見つかると試合をさせてもらえなかったり、試合と試合の間は2ヶ月以上空けなければならない等の「やりたくてもやれない状態」に追い込まれるケースが多いということもあらためて知りました。だから、練習の時からレベルの高い「本気」になれるのでしょう。
●私たちビジネスパーソンも、彼ら4回線ボーイに学び、仕事を「やりたくてもやれない状態」を常に意識しながら、今をいう時間を「本気」に、「真剣」に生きていきたいと思います。