#38
【HASEBE MAKOTO】
みなさんは長谷部誠という男を知っていますか? サッカーファンには今さら説明の必要はありませんね。ご存知ない方のために紹介すると、彼は、現在のサッカー日本代表のキャプテンであり、2010年南アフリカW杯BEST16進出&AFCアジア杯2011の優勝の立役者です。
W杯の直前の練習試合から日本代表のゲームキャプテンとなり、チームを牽引。先のアジア杯でも彼のキャプテンシーは印象的でした。私は、自称スポーツおやじとして、これまでにもいろいろな競技を観戦してきましたが、彼のキャプテンとしての姿は、これまでのキャプテン像とは異なり、とても興味深いものです。そんなわけで、今回のSomething Hのテーマは【HASEBE MAKOTO】について感じていることを書きたいと思います。
私の印象に強く残っている日本代表のキャプテンは、闘将と呼ばれた柱谷選手だったり、アジアの壁、井原選手だったり、天がモデル並みのルックスと高い運動能力の二物を与えた宮本選手あたりです。それぞれに魅力的なキャプテンではありましたが、長谷部選手には、その誰とも違う異質なキャプテンシーを感じます。
敵味方関係なく、額に血管を浮かび上がらせながら大声を張り上げ、紅潮していた柱谷哲司さん。いかにも昭和の時代のスポ根マンガに登場しそうなキャラクターでした。柱谷さんを見ていると、キャプテンは、常に自分にも他人にも厳しく、チームに高い自律性と厳格さをもたらす存在なんだなと思わずにはいられません。私は、高校生の時にバスケットボール部の主将だったのですが、当時は柱谷キャプテンのような姿を一つの理想像としていたように記憶しています。
柱谷さんの次にキャプテンになったのが、アジアの壁こと井原正巳さん。井原さんには柱谷さんのように大声を張り上げているイメージはありません。敵の攻撃を自分の身を挺して黙々と跳ね返す、言葉でわからせるのではなく、行動で示す、不言実行&率先垂範のリーダー像が見て取れました。
気まぐれなトルシエ監督の下では、コロコロとキャプテンが代わり、森岡隆三さんや川口能活さんがキャプテンを務めたけれど、あまり個性的なキャプテンは登場せず、ジーコ監督の時代になって宮本恒靖さんが就任します。
宮本選手のイメージは“男前”で“クレバー”。柱谷さんや井原さんのようなチームを率いるイメージはあまり感じられなかったが、自分の特徴を理解した上で、チームをまとめるキャプテンだったように感じました。チームメイトを鼓舞するというより、戦術を徹底させるために声を張り上げる、そんな感じでしょうか。しかし、2006年のドイツW杯では、大会中にチームにチームは瓦解し、立て直すことができませんでした。世論では、宮本選手のキャプテンシーの弱さが一因とも言われています。
長谷部選手の試合を見ていて強く感じるのは、「彼は怒らない、常に冷静である」ということです。ひどいファールをされた時に、モーションで相手選手に厳しい表情を見せることはあっても、感情的になって胸を小突くようなことはありません。不可解な判定で審判に異議を唱える時に、『笑顔』で話す姿、必要以上に食い下がらず、別れ際、フレンドリーに審判の背中やお尻を軽く叩く姿は過去のキャプテンたちにはほとんど見られませんでした。(柱谷選手は想像すらできません:笑)
スポーツ選手を評する際に「並外れた精神力」という言葉がありますが、長谷部選手には「並外れて安定した情緒」があるようです。チームリーダーの情緒が安定していると、メンバーは高いパフォーマンスを発揮することに集中できます。もし、自分が感情的になってしまったとしても、リーダーが軌道修正してくれる、審判との間に入って交渉してくれる、そんな安心感が今の日本代表の強さの秘訣ではないしょうか。私も長谷部選手を見習って、情緒の安定したコンサルタント&経営者を目指したいと思います。