#125
Hakusan Senpu ~白山旋風~
小学生の頃、図書館で1冊の本を見つけた。
正確なタイトルは忘れてしまったが、確か『甲子園熱戦物語』のような感じだったと記憶している。
全5試合完封、うち2試合連続ノーヒットノーランの海草中学の怪腕嶋清一も
今では“ゆでたまご”と“カツラ”の方が有名になってしまった徳島商業の板東英二も
松山商業と三沢高校の延長18回再試合もすべてこの本がきっかけで知った知識である。
そして、この本の最終エピソードとして紹介されていたのが、
1974年のセンバツで、わずか11人の部員で準優勝した池田高校(徳島)。
四国の山間にある県立高校が、甲子園という大舞台で快進撃を続けた物語は
小学生だった私の心を躍らせた。
小が大に勝つ痛快さ、雑草軍団がエリートを倒す爽快さ。
これを最初に認識させてくれたは、きっと本の中の池田高校野球部だっと思う。
そして、その池田高校を彷彿とさせるチームが
今夏、第100回の記念の年に甲子園に現れた。
その名は三重県立白山高校。
今回のコラムは、この白山高校を取り上げようと思う。
◆
結果から言うと、白山高校の甲子園は1試合で終わった。
8月11日の第4試合でイチローや工藤公康の母校である
愛知の名門校、愛工大名電に0-10で大敗。
私もテレビで観戦していたが、序盤から愛工大名電が危なげなく試合を運び、
日本一の下克上の甲子園編が見られそうな気配は、
まったくと言っていいほどありませんでした。
それでも、10年連続初戦負けだった白山高校の日本一の下克上には、
多くの日本人が勇気と希望をもらったことでしょう。
私も心からの拍手を送りたいと思います。
◆
この白山旋風から私たち中小企業が学ぶことは多いと思う。
「10年連続初戦負け」 - これは中々のダメ学校ぶりだ。
企業に喩えるなら、10年連続赤字決算。
存続こそしているものの、誰からも期待されていない会社。
下手をすると廃部(=倒産)の危機がすぐそこに迫っているかもしれない。
野球の白山高校に限らず、
高校スポーツでは、稀に今回のような下克上に出くわすことがある。
前出の池田高校も然り、07年にかばい旋風を巻き起こした佐賀北高校も記憶に新しい。
サッカーであれば小嶺監督が赴任した直後の国見高校、
バスケットの能代工業も最初は弱小チームだった。
◆
私は、下克上を成し遂げるチームにはいくつかの共通点があると思う。
思いつくままに挙げると、
①共有された高い目標
②熱意があり、科学的な指導者
③長時間練習よりも超多数の練習試合
④理解ある学校と父兄(=口は出さずにお金や時間、労力を提供してくれる協力者)
という感じだろうか。これを中小企業の経営に置き換えるなら
①共有された高い目標
→社員全員でコミットした高い目標やビジョン
②熱意があり、科学的な指導者
→志があり、戦略的思考ができる経営者や経営幹部
③長時間練習よりも超多数の練習試合
→長時間労働によるOJTよりも生産性の高いトレーニングシステム
④理解ある学校と父兄
→理解があって、応援してくれる家族
と置き換えることができる。
◆
加えて、
⑤理解力の高い生徒
を挙げたい。
甲子園やインターハイまで行くような下克上は特別だとして、
各地域、各スポーツで私立の強豪校でもないのに好成績を収めている学校が必ず存在する。
そういう学校は総じて偏差値の高い進学校であることが多い。
今回も東東京予選の決勝に都立小山台高校が進出した。
同校の偏差値は69、東京都全体でも636校中36位。公立高に限れば233校中8位だ。
種目は変わるが、バスケットの東京都インターハイ予選でも、
ベスト16に都立西(72)、ベスト32に筑波大附(77)、都立武蔵野北(65)、
桐朋(71)、早大学院(75)、早稲田実業(75)が進出している。
*カッコは各校の偏差値
少し前に開成高校の野球部の指導方法をテーマにした本が流行ったが、
熱意と科学的な指導を受け止める理解力があることで、下克上の確率は格段に上がると確信する。
◆
中小企業の経営に置き換えるなら、
⑤理解力の高い生徒
→地頭のいい社員
ですね。
「下克上なんてどうせ無理」と最初からあきらめるのが一番簡単でラク。
高校生が旋風を巻き起こしているのですから、
私たち大人も負けずにハッスルしようじゃありませんか!
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