#126
Head coach revolution
平成30年4月9日。
ロシアW杯を約2カ月後に控えたサッカー日本代表は、
ハリルホジッチ監督(当時)の解任を決定。
直近の試合運びに疑問は持たれていたものの
本番を間近に控えたタイミングでの監督交代劇は、
サッカーファンのみならず、ワイドショー的な盛り上がりを伴って
日本列島全体を巻き込み、ヒートアップしていきました。
結果は、皆さん、ご承知の通り、
西野監督の下で予選リーグを突破し、3度目のベスト16.
決勝トーナメントでも優勝候補のベルギーを
あと一歩のところまで追い詰める健闘を見せてくれました。
サッカーに限らず、監督やヘッドコーチを外国人にするか、日本人にするか、
さらに突き詰めれば、国籍を超えて誰にするかという議論は、盛んにおこなわれています。
今月のコラムは、スポーツにおける日本代表監督の選定と組織改革について書いてみたいと思います。
◆
最近、競技種目を問わず代表チームの監督に
外国人を登用するケースが増えているように思います。
代表例としては・・・
バドミントン(朴柱奉・韓国)にラグビー(エディ・ジョーンズ・オーストラリア)、
スピードスケート(ヨハン・デビッド・オランダ)あたりでしょうか。
これらの競技は、近年国際大会でも目覚ましい結果を残しています。
ラグビーなんてW杯の本番で、
優勝候補の南アフリカにガチの勝負で勝ってしまったわけですから、
それはもう大変な躍進です。
◆
なぜ、外国人監督を招聘するのでしょうか?
大きな理由の一つは、各競技の先進国・実績国で培われた高い技術や育成ノウハウの移植。
特に、身体能力や体のサイズで劣るアジアや欧州の小国で培われたノウハウには、
スポーツ超大国アメリカのそれとは異なり、参考にすべき点が多いように感じます。
しかし、最新情報をインプットするという点においては、
言葉の不自由さも、物理的な距離も、渡航の困難さも、
平成が終わろうかという現在、大した問題にはならないのではないかと思います。
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最新技術や育成ノウハウ以上に大きな理由は、
しがらみのないルール・ブレイカーとしての役割を果たすことではないでしょうか。
日本スポーツは、プロ野球を除いて、つい四半世紀前までは、
企業が保有する実業団チームによって成り立ってきていました。
だから、選手も、コーチも、監督も、
自分を食べさせてくれる会社のために頑張るのが当たり前。
折角、日本代表に選ばれても、
代表チームとしての活動より、所属チームの活動を優先しなければならないジレンマがありました。
日本代表の監督やコーチも、
実業団リーグで好成績を収めた監督やコーチから選ばれていました。
他チームの監督やコーチの前で手の内を明かせない、
思い切りプレーできない環境でもあったのです。
◆
愛読誌『Number』の受け売りだが、
バドミントンも、ラグビーも、スピードスケートも、
外国人ヘッドコーチの就任よって、代表チームの合宿日数が急増したそうです。
以前は、代表チームの合宿で
選手を長期間拘束することを所属チームが許しませんでした。
許さないというよりは快く思わないオーラを放ち、
忖度を迫っていたという方が正しい表現かもしれません。
しかし、外国人監督は忖度をしません。
代表チームで結果を出すことだけが、彼らの仕事だからです。
バドミントンも、ラグビーも、スピードスケートも、
早朝から夜間に及ぶ科学に裏付けされたハードトレーニングを積み重ね、
国際大会で結果を残したのは皆さんの記憶にも刻まれていることでしょう。
◆
しがらみのない外国人監督による代表チームの改革。
これは企業の経営改革にも当てはまります。
業績不振・業績低迷の企業は、
黒歴史の中で複雑に絡み合った“しがらみ”でがんじ絡めになっていることが多いものです。
しがらみを断ち切ることができず、よろしくやろうとして、さらに深い泥沼にはまっていきます。
この夏のイチ押しドラマだった『ハゲタカ』に登場したダメダメ企業もすべてそうでした。
改革には、しがらみのないリーダーの登用と
彼による聖域なき経営改革が必要不可欠。
日産のカルロス・ゴーン然り、JALの稲森和夫然りです。
皆さんの会社は、いかがでしょう、
しがらみのないリーダーが必要になってはいませんか?
◆
余談ですが、外国人監督による国際大会での好成績が当たり前になってくると、
日本人監督待望論が出てくる流れになっていると思います。
彼らの好影響を受けた日本人指導者が出現したり、
彼らから直接指導を受けた選手が指導者になったりするのと
シンクロするのかも知れません。
しかし、野球や柔道、水泳等、「日本のお家芸」と言われている競技は、
この流れには乗っていません。
指導者となるタレントが豊富なのかも知れませんね。
瀬戸際にいる(というよりも少し機を逸した感がある)と感じているのが男子バレーボール。
相変わらず監督は日本人ですが、日本らしいバレーにこだわっている間に、
世界の潮流から乗り遅れてしまったような印象を受けているのは私だけではないはずです。
国内リーグのプロ化が中途半端なのも、そんな影響をうけているのかもしれません。
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話しは戻ってサッカー。
W杯が終了し、新しい代表監督は、日本人の森保一氏に決定、
A代表と五輪代表の2つのカテゴリーを兼務します。
日本人監督の誕生は、
オフトにはじまり、ファルカン、トルシエ、ジーコ、オシム、サッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチと
非常時のセットアッパーのように岡田監督が務めた以外は、
世界に通用する日本人らしいサッカーを外国監督に頼ってきた日本が
新しいステージに入ったと感じるに十分な出来事だと感じます。
新しいステージで
どのようなHead coach revolutionが起こるのか、
組織づくりの専門家として、大いに注目したいと思います。
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