#42
重労働がしたい!
みなさんが、今から、日雇いのアルバイトを始めるとします。
仕事を割り振る事務所へ行くと、
ある人には、1時間で終える軽作業が与えられ、
別の人には、6時間かかる重労働が与えられました。
それぞれの仕事の日当が、同じだとした場合に、
みなさんなら、どちらの仕事を与えられたいですか。
答えは、当然、1時間で終える軽作業となりますよね。
ところが、全員が、6時間かかる重労働を与えられたいと望む集団に出くわしました。
それは、
石巻専修大学に拠点を置く、石巻市震災ボランティアセンターでの出来事でした。
私は、先月のコンサルタントコラムを書きながら、実は、悶々としていました。
それは、政争にあけくれ、強烈なリーダーシップが発揮されない政治に対しての苛立ちによるものでした。
この苛立ちは、すぐに、私自身に向けられ「そういうお前(平堀)だって、テレビを見て悶々としているだけで、
自分では何も行動を起こしていないじゃないか」と、私の心がつぶやきました。
そこで、6月5日の夜に仙台に入り、翌早朝に、仕事が楽しい人File6に取り上げさせていただいた
鈴衛さんの車に同乗し、石巻でボランティアをしてきました。
この時に、冒頭の質問に関連した、特殊体験をしたのでした。
私は、民家のヘドロ取りをする仕事を与えられたのですが、この仕事のチームは、
15人で編成されていました。
4台の車に分乗し、石巻専修大学から民家まで移動したのですが、その車中で、
次のような会話が交わされたのでした。
「いや~、昨日、仙台市内のボランティアに参加したんですが、割り振られた仕事が、
1時間程度で終わる、資料の整理だったんですよね。夜行バスに乗って、三重からこちらまで出てきたのに、
与えられた仕事が、1時間だけですから悲しかったですよ。それに比べて、
今日は、6時間も仕事ができて、しかもヘドロ取りの重労働。
三重から出てきたかいがありますよ。」
私を含めて4人が車に乗っていたのですが、この話に全員が大きく頷きました。
そして、民家につき午前中の仕事が終えたお昼休みに、他のメンバーにも同じ質問をすると、
まったくその通りと解答し、今日は、働いたなぁと思える仕事が与えられてよかったですと、言い切ったのです。
被災地は、宿泊施設も限られているため、ボランティアに来られる大多数の方が、
テントをかついで自給自足できる装備を整えてきます。
石巻専修大学の野営地は、ボランティアの人たちのテントで一杯でした。
また、ボランティアセンターの倉庫には、物資は豊富に整っていました。
食料はもちろんのこと、各種の復旧作業に必要な用具
(シャベル、長靴、ゴーグル、防塵マスク、手袋等々)は、完ぺきに揃っています。
汚れてもいい服を身に着けて現地へ行けば、その他、必要な用具は現地で借りることができました。
足りないのは人手。
(東日本大震災へのボランティア数は、阪神淡路大震災と比べてかなり少ないとの報道もありました)
全ての仕事が終えた時に、私と同じ世代ではと思われる女性から声をかけられました。
「平堀さんは、どうして、ボランティアに来られたのですか」と。
私は、
「何にもしていない自分にいらついてしまったからです」と答えました。
するとこの女性は、
「私は、何回もボランティアに来ているんですけど、ボランティアって
自分のためにしている気がするんですよね。無力な自分への失望感を少しでも癒すためにボランティアを
しているのだと、来るたびに思うんです」
と、私を諭すように話してくれました。
一人ひとりの力は小さくても、一人ひとりの力が重なれば大きくなる。
日本だけではなく、世界中の人たちが日本の復興支援をしてくれています。
この一人ひとりの力を信じて、みんなで前に進もう!
石巻のボランティア体験から、こんな勇気をいただきました。