#13
【Hospital Clown】
今回のSomething H [aʃ]は、【Hospital Clown】をテーマに書きます。
Clownとは「道化師」のことです。そして【Hospital Clown】とは、病室内でクラウンの笑いや楽しさで子供を中心とした長期療養の患者の創造性を膨らまし、能動性を引き出し、社会性を取り戻すサポートをする仕事です。
先日、プロのクラウンであり、日本ホスピタルクラウン協会の理事長である大棟耕介氏の講演を機会がありました。十年くらい前に、ロビン・ウィリアムス主演の『パッチ・アダムス』という映画を観たことがあり、アメリカにそのような職業があることは認識していましたが、日本にもそのようなことを職業にしている方がいらっしゃるということは知りませんでした。
大棟さんのお話は、多くの示唆に富み、とてもエネルギッシュで、人間として、同い歳の男としてとても刺激を受けました。特に講演全体を通じて感じられた『プロ意識』には学ぶことが多かったです。
大棟さんは、私たちに向かって話をしながら、手を背中に回して風船を使って犬を作ります。この時、話が途切れたりすることはありません。また、欧米には国境なき道化師団という組織があり、戦地や被災地に出向いて現地の人たちの心を癒したり、勇気や希望を取り戻す手伝いするクラウンたちがいるそうです。世界的に有名なクラウンである大棟さんにも当然声がかかるのですが、大棟さんは「自分の立ち位置」をとても大切にしており、自分がクラウンとして100%のパフォーマンスを発揮する自信がない地域へは決して出向きません。適切な言葉が見つからないのですが、似非な思いやりによる安請け合いは絶対にしないのです。恐らく、さらに人間として成熟し、そのような場所に赴いた時でも平常心でベストなパフォーマンスが発揮できると確信された時には、それこそ誰よりも精力的に活動されることだと思います。
プロとして仕事をする上での『スキルの重要性』についてのお話にも納得させられました。どんな仕事であっても最優先されるべきは、一人前のスキルを身につけることである。最近は「感動」とか「サプライズ」とか「ホスピタリティ」という言葉に注目が集まっていますが、大棟さんは、一人前のスキルを身につける前に「心」の世界に傾倒してしまうことの愚かさや危険性を分かりやすく話をしていました。「心が綺麗で思いやりに溢れているがスキル不足の医者と腹黒くて私腹を肥やすことしか考えていないが最高のスキルを持った医者、あなただったらどちらに手術を依頼しますか?」という言葉が印象的でした。(そういう話をしている大棟さんは、最高の心の持ち主だと思います)
まだまだ、お伝えしたいことはあるのですが、スペースの関係もあるのでこのあたりで筆を止めたいと思います。自分の仕事に置き換えても、本当に考えさせられることばかりでした。機会があれば、大棟さんのお話を聞いてみることをお勧めします。
大棟耕介氏の公式ホームページ:http://www.pleasure-p.co.jp/ohmune/
日本ホスピタル・クラウン協会ホームページ:http://www.hospital-clown.jp/