#15
【Homism】
4月です。我がアッシュ・マネジメント・コンサルティングもお陰様で第4期目を迎えることができました。3月26日、27日に恒例の中経合宿に行ってきました。この合宿では、普段、なかなか時間をとって話せないマーケティングや商品開発の方向性について議論し、各人のタスクに落とします。話し合いの中であらためて感じたことは、今期は我々にとって本当の意味での実力が問われる年になるということです。ただ、そのような状況は、もしかすると我々だけでなく、多くの企業にとっても同じなのかもしれません。
そこで、今回のSomething H は、厳しい経営環境を乗り切るための心の有り様として【Homism】をテーマに書きたいと思います。【Homism】とは、私が作った造語で「家庭主義」「家族主義」という意味を表しています。【Homey(家庭的な)】と【-ism(主義)】を掛け合わせたものと考えてください。
テレビや新聞等の大マスコミが「不況、不況」と煽り立てるのは感心しませんが、客観的に見て経営環境が厳しいものである事実は受け入れなければなりません。同じことを同じようにやっていたら、間違いなく業績は落ちる企業がほとんどでしょう。もちろん、業績不振を景気のせいにしてはいけないことくらい十分理解していますが、今、このタイミングで儲けられるビジネスモデルを構築できていない企業に対して、「業績不振を景気のせいにするのはお門違いですよ」等と正論をぶつけることはあまり意味がありません。確かにこういう時期でも事業の基盤づくりはできるのかもしれませんが、それは下りのエスカレーターを駆け上がっていくようものだと思います。同じことをするなら上りのエスカレーターを駆け上がった方が何倍も効果的だし、効率的です。
しかし、世の中には増(同)収増益や減収増益の計画を打ち出す会社が多いのです。株主の目を気にしなければならない上場企業は、可哀想ですが宿命なんでしょうね。最初から減収減益の計画なんて出したら、経営陣は無能のレッテルを貼られてしまいますし・・・。そういう企業の計画を見ていて感じるのは、本当にそれだけの数字をやる具体的なプランがたっているのかなということです。3ヵ月後、半年後に下方修正をする発表する多くの企業は、おそらく“数字合わせ”をしているだけなんだろうなと・・・。そして、次に考えるのは、そのような会社で働く社員は気の毒だということ。上層部ですら雲を掴むような話であるにも関わらず、「なぜ達成できないんだ!」「ヤル気はあるのかッ!」「手を尽くしているのかッ!」と叱責され、中には精神的に病んでしまったり、会社を去る人も出るのではないでしょうか。
こういうご時勢こそ、過去の業績に縛られること無く、今を起点にどこまでの売上が見通せるのかを真剣に議論すべきです。その結果、前年を下回る売上しか見通せないのであれば、それで利益が出る(場合によってはトントンの)コスト予算を組むしかありません。そして、その状況を社員一人ひとりにキチンと説明してあげてください。そういう行為なくして、社員に経営者意識は根付かないと思うのです。
そして、その時に大事になるのが【Homism】です。今の状況を家庭に置き換えれば、きっとこんな感じではないでしょうか。
父:「みんな、ちょっといいか。今日はみんなに折り入って話がある」
母:「何ですか」
子:「何?」
父:「父さんは、去年は毎月40万円、会社から給料をもらっていた。それに加えてボーナスが7月と12月にあった。ただ、今年は月の給料は36万円になる。ボーナスも出るかどうかはわからん。だから、みんなには少し不自由を強いるかもしれんが、協力してほしい。まずは毎月36万でキチンと生活が回るように母さんに頑張ってほしい。そのための協力は家族全員が進んでするんだ。いいな。」
母:「わかりました。私はなるべく安い材料を買って、無駄なく使うように料理を工夫します」
子:「わかったよ。俺は、自分でバイトするから毎月の小遣いはいいよ」
父:「みんな、ありがとう。父さんも昼飯は弁当を持っていくことにするよ。母さん、頼むね」
こんな聞き分けの良い家族がいるわけない!と思われる方もいるかもしれませんが、「いざ」となれば、日頃からキチンとコミュニケーションを取っている家族なら、これくらいの協力は絶対にしてくれます。そして、これは企業にも同じことが言えるのです。大企業には到底できない不況の乗り切り方ですが、中小企業ならできます。絶対にできます。
情に訴えて倹約経営を承認させろと言っているわけではありません。しかし、無根拠な売上予算に汲々とするよりも、できる目標を共有し、共に達成の喜びを分かち合う方が健全だし、楽しいと思うのです。