#156
ボロ負けのその後で…
これまでSomething H [aʃ]というタイトルの下、
13年にわたってHから始まるタイトルでコラムを書いてきました。
しかし、最近はタイトルをHから始められないことが理由で
書きたいことが書けないストレスを感じるようになっていました。
そこで、熟慮の結果、タイトルをHから始めるというルールを見直し、
書きたいことを書いていこうと決めました。
これまでタイトルを楽しみにしていただいていた読者の皆様には申し訳ありませんが、
何とぞご了承ください。(そんな人、いないか…)
引き続き、ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。
◆
ルール変更後の記念すべき1本目は、
3月30日におこなわれたサッカーワールドカップのアジア2次予選、
日本vsモンゴルを取り上げます。
結果については、周知のとおり、
日本代表が14-0という歴史的大勝でモンゴル代表を破りました。
第1戦も6-0だったので、もともと力の差は相当あったのでしょうが、
9点目を取ったあたりから、モンゴル代表の戦意が目に見えて失われ、
たった3分のアディショナル・タイムで2点が入るくらい、
試合の終盤は一方的な展開でした。
それでも、テレビに映るヨーロッパ人と思しきモンゴル代表の監督は、
10点目以降も、日本に点数を取られる度に、同じように悔しがっていました。
私は、この試合を大学1年の息子と一緒にテレビで見ていたのですが、
終了間際に、息子がボソッと
「こういう試合の後って、監督はロッカールームでどんな話をするんだろうね」
と呟いたのです。
◆
私は、ボロ負けしたチームのアフター・ミーティングなんて微塵も考えていなかったので、
即答はできませんでしたが、息子からの問いかけに応えるように思考を巡らし、
想像してみました。
最初にイメージしたのは、監督が激高するパターン。
「お前ら、何をやっているんだ! それでも国を代表する選手なのか!!」
「相手だって同じ人間じゃないか! 何でサッカーの試合で14点も取られるんだ!!!」
と喚き散らし、選手を奮い立たせようとする姿。
まぁ、言ってもいいけど、0-14で負けた後に、心にスッと入るのかな?
そんな疑問も湧きました。
次にイメージしたのは、今日のところはそっとしておくパターン。
「お疲れ様、この結果は皆も受け入れがたいだろうし、
今日は疲れてもいるだろうから、反省は明日にしよう」
とミーティングを早々に切り上げる姿。
気づかってくれるのはありがたいが、
こんな衝撃的な教材を目の前にして何も使わないというのは、
それはそれで勿体ない気もします。
考えてみて、はじめて気づいた息子の問いかけの難しさ。
◆
そして、自分なりに出した答えは、
●試合前に何を目標にするかが大切なんだ
というものでした。
日本との第1戦を0-6で落としたモンゴルにとって、
この日の目標は勝利ではなかったと推測します。
サッカーは詳しくありませんが、全員で守り、攻めはカウンター狙い、
ボールを持った選手には素早く体を寄せて、自由にパスをさせない、
そんな感じのゲームプランが出ていたとしたら、
そのプランをどれだけ遂行できたのか、
持てる力はすべて出せたのか、もっと改善できる点はなかったのか、
私が監督なら、そんな振り返りをしっかりやるだろうなと思った次第です。
仕事に置き換えるなら、このような状況では、
最終結果を示すKGI(=Key Goal Indicator/重要目標達成指標)よりも、
プロセスを管理するKPI(=Key Performance Indicator/重要業績管理指標)の
達成状況が重要だ、ということです。
◆
特に、今持っている能力では敵わない強い相手と闘ったり、
超えられない高い壁に挑んだりする時ほど、しっかり目標を立ておかないと
感情任せの檄や表面的な労いに帰結してしまうんですね。
バスケットボールに打ち込んでいた大学3年の公式戦で、
当時“最強”と言われた日体大と対戦したことがあります。
結果は133-50。
予想通りの大敗でしたが、当時のコーチは、試合後のロッカールームで、
試合前に決めた目標に対してしっかりとしたふり返りをはじめました。
私たち選手は、
ベンチ入りしたメンバー全員が王者日体大から得点を取れたことにそこそこ満足し、
それほど反省するモードでもなかったので
些か厳しめのふり返りに緊張感が走ったことを覚えています。
そういうコーチに指導いただいたおかげで、
その後の公式戦でも、実力以上の結果を出すことができ、
気持ちよく学生バスケを引退をすることができました。
もし、日体大との試合に何の目標設定もせずに、
有名選手との記念試合の如く臨んでいたら、
同じように充実した日々を送ることはできなかったと思います。
◆
サッカーのW杯予選から、
まさかバスケットをしていた頃の大学時代にタイムスリップし、
目標設定の大切さをあらためて考えることになると思いもよりませんでした。
青春時代の人気ドラマ『スクールウォーズ』で語り草になっているシーンの1つに、
川浜高校が相模一校に109-0で負けた後のロッカールームがあります
今の時代、こんなバイオレンスなシーンにお目にかかることはないでしょう。
しかし、何も目標を持たずに強い相手との闘いに臨めば、
何の学習にもならない無様で惨めさが待っているだけだという教訓には
なるのではないでしょうか。
4月になり、新たに目標設定を試みる時期になります。
なかには、世間をアッと言わせるようなムーンショット*を掲げる方も多いことでしょう。
そんな時こそ、KGIだけでなく、KPIもしっかり設定しましょう、というお話でした。
※ムーンショットとは、第35代アメリカ大統領ジョン・F・ケネディの
「月に向かってロケットを打ち上げる」という前代未聞の計画に由来する
“誰もやったことがないような大きな目標”を表す言葉です。
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