#175
下戸(ゲコ)の気持ち
“ゲコからすれば、飲み放題の宴会はウーロン茶のがぶ飲み大会”
この表現が脳裏に焼き付いて離れません。
この表現に出会ったのは
『ゲコノミクス 巨大市場を開拓せよ!』という
有名投資家、藤野英人氏の著書。
書籍自体は著者の私見が強くて、好き嫌いが分かれるでしょうが、
私は冒頭の一文が心に突き刺さっただけで元は取れたと思っています。
◆
著者はFacebookの中で
「ゲコノミスト(お酒を飲まない生き方を楽しむ会)」
というコミュニティを主宰しており、
そこには、たくさんのお酒を飲まない生き方を
ポジティブに選択している人たちがいます。
書籍でもゲコノミストたちの言葉がたくさん紹介されていました。
一部ですが、ご紹介しましょう。
店に「ワインと合うお食事をした」といった貼り紙がしてあると、
ゲコを歓迎していないのかなぁと思ってしまいます。
居心地の良いお店を見つけても
「ワインリストをお持ちしましょうか」と素敵な笑顔で言われると、
申し訳ない気持ちになります。
国際線のビジネスクラスに乗ったときも思いました。
回らない鮨店。
「お造りでお酒が粋」「握りでおなかを一杯にするのはヤボ」
みたいな雰囲気があると辛いです。
長いワインページをペラペラめくり進んで、
やっとたどり着いたソフトドリンクが数種類だったときは、
我が身の収まりの悪さを感じます。
意外とつまんないのが旅先。
旅館だとノンアルコールは、ウーロン茶か、ジュースか、コーラしかない。
なるほどなぁ、お酒を飲まない人からは
私たちが楽しく過ごしている居酒屋やレストランがこんな風に見えているのか
と感心してしまいました。
◆
こんな意見もありました。
私は体質的には飲めるので、飲んだり飲まなかったりなのですが、
先日、食前酒から食後酒まで(それこそ料理を楽しむように)お酒をいただいたお店で
「しっかりとした飲み方をされるお客様が少ないので、うれしいです」
とオーナーシェフがおっしゃったのが心に残っています。
褒めてもらって素直にうれしい反面、
「お酒を頼まないと来づらいお店なのかな・・・」と思ってしまい、
「飲むぞ」と気合いを入れて行かなきゃと思うお店になってしまいました。
お店の収益構造の話もあるとは思いますが、
単純にシェフ自身が「料理+お酒」に過度にとらわれてしまっているのかなと
思うことがあります。
お店側としては、お客様に「いい気持ち」になってもらいたくて伝えたつもりが、
心の奥底ではこんな感情を抱かれていたなんて複雑ですね。
「そんなことを気にしていたら何も話せないよ!
相手も悪気があるわけじゃないんだし、
そんなに重たく考えなくてもいいんじゃない」
という意見もあるのはわかります。
でも、お酒が飲めない当の本人からすると心地が良くないのは確かなんでしょう。
もし、私たち上戸(酒飲み)や飲食店が少しだけ気を使うことで心地よくなるのであれば
それくらいの気遣いは身につけたいなとは思います。
◆
病院の問診票や街頭のアンケートに性別欄があることも、
LGBTQA+には心地がよくない。
「10年も働いた仕事を辞めて、海外留学なんてすごいね」という称賛も
「奥さんの夢を応援して、専業主夫をするなんて大したもんだね」という評価も
大学時代は最初からずっとコロナで、行動を制限されていた三年生に
「学生時代に力を入れたことは?」という質問も発言している側には悪意はない。
だけど、その発言を受け止めている側は心がゾワゾワする。
そんな場面が、きっと其処彼処にあるのでしょう。
◆
斯く言う私も漬物が食べられません(汗)
その事実を伝えると、漬物好きの方の中には、
「人生の半分、損してるよ」と仰る方がいらっしゃいます。
※お酒と同じですね(笑)
私は、居心地が悪いということは一切なく、
「あなただってトマトが苦手ですよね? それと同じです」
という主旨の反撃をもっとマイルドな表現でするだけです。
でも、このやり取りは、きっといらない。
私への「人生の半分、損しているよ」も
私からの「あなただって・・・」も。
その方が、世の中からゾワゾワがなくなって、心地のいい人が増える。
今さらながらに、そんな当たり前の、
だけど、たいせつなことに気づいた秋の夜長の読書でした。
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