#16
豚インフルエンザが警鐘していること
豚インフルエンザが発生したとの報道が4月25日ごろになされ、1週間足らずの期間で、世界的大流行(パンデミック)の一つ手前の警戒レベルを世界保健機関(WHO)が宣言した。新型インフルエンザの感染者は、メキシコから米国、カナダへと次々と広がり、4月30日現在の報道によると、世界13カ国に拡大している。そして、5月1日の午前1時30分ごろ厚生労働省の舛添大臣が、日本でも感染の疑いのある患者が確認されたことを伝える緊急記者会見を開いた。
新型インフルエンザから身を守る対策として、「うがい・手洗い・マスクの励行」「食料・水・日用品の備蓄(2週間分)」「せきをするときのマナーの徹底」「日頃からの情報収集」「十分に休養をとり、抵抗力を高める」「不要不急の外出・旅行を控える」「感染したと思ったら、保健所の発熱相談センターに連絡後、病院の発熱外来へ行く」との7カ条もテレビや新聞を通じて提示されている。
その他、最近の報道では、公然わいせつ罪に問われた人気芸能人や、企業献金にからむある政党の党首の進退についても取り上げられたが、新型インフルエンザに関する取扱いとは明らかな違いがある。
それは、問題の発生原因と対処策を具体的に示す報道と、視聴者の感情に訴える報道との差である。
我々聴衆は、どちらかというと後者の報道スタイルを歓迎する傾向があるのではないだろうか。問題の本質や解決策に関する内容よりも、問題事象が発生した背景、特に人との関わりについて報じられる方が興味を示す。 人間の特性として、「難しいことを決議すると、会議の参加者は見識者の主張を素直に聞き入れ、簡単なことの決議になると参加者は色々な意見を出しまとまらなくなる」と言われている。例えば、「オフィスに設置したゴミ箱の置き場所は、どこが適切か」という議題で討議するとなかなか意見がまとまらないが、「個人情報保護法に則った情報の取り扱い方」というテーマだと、決裁を求めている者の案に速やかに賛成するという感じである。 情報過多の社会と言われて久しく、我々は情報を取捨選択する能力が必要であると迫られているが、その選択の基準は、“情報の本質を見抜くこと”にすべきなのだろう。
新型インフルエンザは人類の存亡に関わる問題であり、だから、政府も報道機関も、そして我々民衆も、真剣に情報を収集し対処策を講じている。
この世界を席巻している問題は、景気回復に水を差す出来事だとも言われるが、「目の前にある問題を直視して、できる手だてを手抜きせずにやり切れ」と天が警鐘してくれているとも取れる。
新型インフルエンザから身を守る7カ条に習い、各企業も事業方針を箇条書きに列挙し、一つ一つ対処していけば、必ずトンネルの出口は見えてくるはずだ。
病気の大流行ではなく、“本質を見抜く”と“対策の実行”をキーワードにして、景気回復のムーブメントを呼び起こそうではないか。
※HOT WILLerとは、「独自の志を持ち、その実現に向けた活動を実直に続けている人」を指す。この方々に向けた応援メッセージを毎月贈り続けている。※