#45
語り継ぐ、忘れてはならない出来事
みなさん、3月11日は、どうされていましたか?
帰宅するのに、10時間近くも歩いた方
避難所の学校で、一夜を明かした方。
オフィスに宿泊した方
液状化現象に巻き込まれた方
エレベータの停止で、高層階までの昇り降りを余儀なくされた方
などなど、様々な被害にあわれたことでしょう。
9月は、震災から6カ月が経過した月ということで、
各放送局が特番を組んでいました。
私は、この機会に、文芸春秋の8月臨時増刊号
「つなみ」被災地のこども80人の作文集に目を通しました。
被災地の子供たちが綴った作文が、直筆で掲載されています。
「つなみは黒くてくさかった」
「地鳴りが『ゴォー』」
「だるさ・吐き気・へんな感覚」
「おにぎり一個十分かけて食べた」
その他、こどもたちが目の当たりにした出来事が作文に記されています。
この作文集を読むと、
いたたまれない気持ちになります。
自分の無力さに、情けなくなったりもします。
しかし、この事実から目を背けてはいけないと、
「つなみ」被災地のこども80人の作文集は
我々に訴えているのだと思います。
絶対に忘れてはいけない出来事が、この世には存在します。
その時に抱いた、言葉や文字に表せない感情を心にとどめて
いつでも引き出せるようにしなければなりません。
なぜなら、我々人間は、しばらくすると、
その時の記憶が薄れ、その時に得た感情も感覚も鈍くなってしまう動物だからです。
ですから、3月11日14時46分の出来事や体験を
被災地のこどもたちだけではなく、
我々も記録し、語り継ぐことが肝心だと思うのです。
「つなみ」被災地のこども80人の作文集のおわりに
ジャーナリストの森健さんが、次のように記しています。
作文を打診した段階で、執筆を迷った子は少なからずいた。
学校もはじまり、避難所では消灯も早い。
なによりも作文は面倒くさいし、まだ震災から日の浅い時期にあって
思い出すのもつらかっただろう。
けれども、多くの子が意を決して引き受けてくれた。
その結果こうして集まった彼ら彼女らの言葉は、
衝撃的な映像や統計的な数字よりも、はるかに雄弁に現場の真実を伝えてくれた。
確かに、映像や統計的な数字だけでは、真実は伝わりません。
我々一人ひとりが、自分の言葉で語らなければ。
語り継ぐ対象は、未来をになう、
今、この瞬間に、生まれてきているこどもたち。
これから生まれてくるこどもたち。
彼ら彼女らに、自分の言葉で語る準備を整える。
そのために、次の質問を、お互いにしていくことを提案します。
「3月11日は、どうされていましたか?」
今年も、来年も、再来年も
10年後も、20年後も、30年後も、
3月11日がどういう日だったのか、
我々が語り継ぐことで、
こどもたちが土にまみれて、安心して遊べる日本を再構築し、
次世代に引き継いでいきましょう。