#50
「へぇ〜!」が工夫の芽を育む
この写真に写っているモノは、何でしょうか?
「こんなの誰でもわかるよ」
「名札でしょ」
と答えた方は、100点満点で50点。
もう少しじっくり観察して、答えてみてください。
正解は、“事務所移転の挨拶状”を利用した名札です。
この答えを読んで、「凄いなぁ」と感嘆した方は、
企業内で実施される改善活動の推進リーダーに打ってつけのタイプです。
企業研修を行う際に、名札をお願いすると、
大概は、市販の名札(胸につける形態か卓上用)が準備されるので、
今回のように、事務所の移転案内を活用した名札を見たのは、初めてでした。
この工夫に触れてみると、二つ折りで制作された移転案内は、立てて使うのに
打ってつけなモノであると気がつきます。
まさに、“コロンブスの卵”と言える事例です。
※コロンブスの卵とは、
コロンブスは、卓上のゆで卵を取り出して、
「誰かこの卵を立てることが出来ますか?」
と問いました。
みんな、いろいろやってみましたが出来ませんでした。
そこで、コロンブスは、ゆで卵をポンと殻を割って立ててみせました。
みんなが、「なんだ、そんなの簡単じゃないか」といった時、
コロンブスは静かに、「何事も、後から種を明かされたら簡単に見えるものなのですよ」
と言ったエピソード。
ある工夫を目の前で見せられて、
「なるほど〜」と感心する人と、
「なんだ、そんなことか」と受け流してしまう人と
大雑把ですが、二種類に分かれるのではないでしょうか。
一般的に、どちらに反応する人が多いかと問われると、
「なんだ、そんなことか」派の人が意外に多いという実感を、私は持っています。
それは、研修の感想欄に、「もっと斬新なノウハウや事例を学びたかった」と書かれるケースを、
度々目にするからかもしれません。
研修では、「知行合一。知っていても、実行しなければ、知らないに等しいのですよ」と
繰り返し伝え、マネジメントの基本を力説するのですが・・・。
とは言え、これは、私の講師としての力不足も原因なので、取り敢えず置いておき、
「なんだ、そんなことか」の一言は、各企業が内包している工夫の芽を摘んでしまうことを、
みなさんには認識していただきたいのです。
従来通りの仕事のやり方を変革し、より大きな成果を出そうと、
「創意工夫しよう!」
「知恵をだそう!」
と各企業はスローガンを掲げますが、
「なかなか改善が進まなくて」と嘆く経営者や事務局責任者が、多いという現実があります。
私は、このような相談を受けると、
ちょっとしたことでも「なるほど〜。そういうアイディアもあるんだ!」と
感嘆の声を上げましょうと、アドバイスしています。
トリビアの泉に倣って、「へぇ〜!」ボタンを押そうと、お薦めします。
みなさんが、
「こんなこと考えてみたんですが」と上司や同僚に話したときの情景を思い浮かべれば、
「へぇ〜!」ボタンが、工夫の芽は育てるとの提言に、賛同していただけるでしょう。
ですから、冒頭に掲載した写真の答えに触れて、
「凄いなぁ」と感嘆した方は、
企業内で実施される改善活動の推進リーダーに打ってつけのタイプだと
断言したのです。
「へぇ〜!」の感嘆を、社内に広げるのは、簡単ではありません。
しかし、難しいかと問われれば、難しいことでもありません。
「へぇ〜!」の普及に努め、改善の芽を摘む閉塞感(へぇそくかん)を打破しましょう。
(つまらないダジャレのオンパレードに、「へぇ〜!」はいりません。(笑い))
最後になりましたが、今回ご案内した名札の事例は、
先日研修を実施した、フクムラ仮設㈱さんから生まれました。
私が、取締役の福村さんに、「この着眼ができるって素晴らしいですね」と言うと、
「そうでしょう。もったいないと、余った移転案内を取っておくのは誰でも考えられるのですが、実際に、この移転案内を工夫して使うのは、なかなか出来ないですよね。」
「うちの総務のメンバーは、本当に、優秀なんですよ!」
と、嬉しそうに解説してくれました。
「へぇ〜」の風土が、バリバリに醸成されているのは、この一言からも明らかですね。