#4
善の感情
ショッピングセンターやサービスエリアに設置されている障害者用駐車場に、入り口に近いという理由で健常者が駐車しているニュースが取り上げられていた。特に悪質なのは、健常者であるにも関わらず、車椅子マーク(障害者が常用している車であることを表す、車椅子をデザインしたブルーのステッカー)を貼り、駐車しているケースである。私は、過去に1ヶ月ほど松葉杖を使った生活をしたことがあるが、片足で移動することの負担は相当なものであった。電車内で席を譲っていただくことも度々あったが、感謝心に加えて、健常なときにこの負担の大きさをわかっていなかった自分が恥ずかしくもなった。基本的なマナーを守り、ちょっとした思いやりが、豊かな社会を築く上で大切であることは、いまさら言うまでもないだろう。が、自分だけよければという、利己的な行為は横行してやまない。歯止めをかけるための方策は、法律を制定して罰則を科す、マナー違反者には厳しく注意する等が上げられるが、何でもルールで縛り、目くじらを立てて対応するのでは、何かもの悲しい。心得のある人たちが襟を正した行動をしてみせ、それが他者に伝播され、ディズニーランドでゴミを捨てられないような雰囲気と同様の文化が醸成されることが理想といえるだろう。万が一、不心得ものが現れたら、「こちらは、障害のある方のための駐車場ですよ。お間違えないようにしてくださいね」と笑顔で声をかけることが効果的なのだそうだ。相手を善人として尊重した行為が、自然に善の感情を導き出すというのだ。善に触れると善の感情が芽生え、悪に触れると悪の感情が顔を出す。自分に当てはめて考えれば理解はできるが、善を貫き通すことは容易(たやす)くない。だから、“今月のちょっといい話”に価値があるとも言えるのだろう。