#27
「宮里藍ちゃんの快進撃」
◆女子プロゴルファーの宮里藍選手だが、今年はツアー開幕2連勝を果たし、調子は上々のようだ。そんな藍ちゃんも、国内では敵なしの勢いで2006年から米国ツアーに参戦したものの、昨年の7月に初優勝を遂げるまでにはかなり苦労をした。初優勝を決めるウイニングパットを沈めた藍ちゃんが、帽子のつばを押さえて涙を流した姿を観て、我々ファンももらい泣きをした。
◆藍ちゃんは、2007年の夏に、角川SSC新書より『I am here』を出版している。この本の帯には、「もうすこし待ってください。いずれアメリカで優勝します。」と記されている。私は、このキャッチコピーに目を奪われて、この本を思わず購読した。
◆本やTV等で取り上げられる事例は、あることを成し遂げたという実績が出てから表わされるものなのに、藍ちゃんは、米国のツアーで苦しんでいるさなかに、優勝を宣言する本を出版してしまった。「もし、優勝できなかったらどうなるんだろう」と心配するのは私だけではなかったはずだ。
◆結果が出てから人を評価するのは誰にでもできるが、実は、その評価にあまり意味はない。それは、「あんなところで魚が釣れるわけないよ」と評論していた野次馬が、魚を釣り上げた途端に「やっぱり、釣れると思っていたんだよな」と手のひらを返す調子のよさに近いからだ。
◆ここで重要なことは、結果が出る前に、成果が出ることを信じられるか。あるいは、信じてあげられるかどうかである。もちろん、根拠もなく闇雲に信じろと言っているのではない。必ず成果に結びつくと確信できる行動を持続している自分やメンバーを信じるのである。我々ビジネスパーソンにとっての成果を生み出す行動は、そんなに難しい事はない。誰もが分かっている事。そして、自分がやらねばならないと自覚している当り前の事を、粘り強くやり続ける。これが基本であることは誰もが知っている。そして、この基本を諦めずに継続しているメンバーを見て、「成果は必ず出るから心配するな」と言ってあげられる上司は、極めて少ない。
◆結果が出なければ、「何をやっているんだ。もっとしっかりやれ」と叱責し、結果が出れば「よくやった」と褒めることで、マネジャーの職責を果たしていると勘違いしている管理者が何と多いことか。ドッラッカーは“マネジメントとは生産的な仕事を通じて、働く人たちに成果をあげさせなければならない”と説いている。マネジャーの職責は、統括するメンバーが成果をあげるように支援することなのだ。
◆この機会に藍ちゃんに見習って、結果評論型のマネジメントスタイルから、達成支援型のマネジメントスタイルに切り替えてみよう。チームメンバーは、必ず勢いづく。
◆次回のコラムの予告 「モチベーション3.0って何だろう」です。5月1日をお楽しみに。
※HOT WILLerとは、「独自の志を持ち、その実現に向けた活動を実直に続けている人」を指す。この方々に向けた応援メッセージを毎月贈り続けている。※