#107
30秒で仕上げた絵が100万円
「みなさん、これからは、自己研鑽能力の高低で、自身の将来が決まる時代ですよ」
これは、昨年私が、母校の大学の2年生に向けた
「コンサルタントの仕事とは」
というテーマで話をした結びの一言です。
この前段に
「働き方改革という旗印の下、残業時間の管理が厳格になった今」
を話題に取り上げていました。
私の知人の経営者のボヤキを事例に交えながら、学生に、
次のように説明しました。
「平堀さん、これからは、残業代を払わないと部下を
飲みにも誘えない時代になりましたよね」
これは、自主参加を前提にして、休日にBBQイベントを
開催したモノの、参加した社員からの
「休日出勤扱いにしないとおかしい」
という陰口へのボヤキです。
同様の要求は、
仕事に役立つ本の購読を勧めた際にも飛び出すそうです。
「本の購入代は、会社負担なのですか」
「読後感想分の作成は、業務中に行ってもいいのですか」
と、いうように。
このような経緯があり、この経営者は、残業代を払わないと部下と
飲みにもいけないとこぼしたわけです。
要するに、よかれと思っても、就業時間内で出来る範囲でしか、
社員に何かを提案できない時代になった。
上司からのむやみやたらな指示は困りますが、よりよい仕事をするために、
「○○について勉強しておけ」と迂闊には言えないとなると、自己啓発は、
社員の自己判断に委ねられます。
なので、
「これからは、自己研鑽能力の高低で、自身の将来が決まる時代ですよ」
と言いたいのです。
私のコンサルティング先の企業でも、ここ数年間で残業時間は、
かなり削減されています。
これは、ある側面では素晴らしい成果です。
しかし、 “業務終了後の時間の使い方”を社員に問うと、大半が、
漫然と過ごしていると答えます。
ここで閑話休題、ピカソの逸話を紹介しましょう。
ある日、ピカソがレストランに入ると、店員から、
「私は、あなたの大ファンなので、お会いできて光栄です。
すみませんが、こちらに、簡単で結構なので絵を描いていただけませんか」
と、ピカソに頼みました。
すると、ピカソはニコッと笑いながら店員から渡された紙に絵を描き、
こう言いました。
「100万円になります」
店員は、驚いて
「ピカソさん、たったの30秒で仕上げた絵が、100万円もするって、
どういうことですか」
と尋ねました。
ピカソは、
「30秒?」
「それは、違います。この絵には、30年と30秒の時間がかかっているのです」
と、答えました。
残業規制の強化により、自身の自由になる時間が増えます。
この時間を
・自己投資に活用するのか
・浪費してしまうのか
によって、自身の将来が決まります。
時間は貯金ができない。
貴重な時間を大切に使い切るしか、時間を価値に変換できない。
この誰もがわかっている不変の真理を実践できる人が極めて少ないので、
後輩たちには、自己投資に時間を使ってもらいたいとの願いを込めて、
講義を結びました。