#115
多勢は無勢
ただ今、バルセロナ=エル・プラット空港にいます。
当社の恒例行事をなった、年に1回の海外研修旅行。
言葉の通じない、異国に地への旅は、我々に様々な経験をさせてくれます。
今回は、カタルーニャ州の独立の是非を問う州民投票の日(10月1日)と重なり、2つの予定外の出来事に遭遇しました。
その一つは、FCバルセロナ対ラス・パルマスの試合。
バルセロナ旅行の目玉の一つにしていた、本場のサッカー観戦。
メッシの雄姿を生で見られる。こんな思いで試合当日を迎え、試合開始1時間前に勇んでタクシーに乗り、行き先を、聖地「カンプ・ノウ」へと伝えると、運転手から返ってきた言葉は、
「独立投票に関連した混乱を避けるために、試合は延期になるみたいだよ」
我々の頭の中は、「・・・?」
スペイン語に堪能な知人(作田文子さん)が一緒だったので、ドライバーの言っていることは正確に通訳され、最新情報をネットで補足し、結果、無観客試合になる現実を受け止めたのでした。
とは言うものの、気持ちはおさまらず、
「カンプ・ノウ」
で、タクシーを降りました。
スタジアムの周りには大勢のサポーターが集まり、開門を待っていました。
試合の延期か、無観客試合の決定が正式に発表された後の混乱を避けるために我々は、
「カンプ・ノウ」を去るしかありませんでした。
予定外の出来事の2つめは、
交通ゼネスト。
カタルーニャ州の独立を問う選挙を認めない連邦政府への抗議として、10月3日は、鉄道、バス、タクシーのあらゆる交通機関がゼネストに入るとの情報が、10月2日の夜10時ごろに入ってきました。
情報源は、辻の知人。
メッセンジャーを介して、
「明日、帰国できるの?」
との問いかけから、詳細を教えてもらい、状況を把握しました。
どの程度の規模でゼネストが断行されるのかわからないため、100%のリスクヘッジ手段として、
10月2日の内に空港へ移動し、フライト時刻まで空港で過ごすという選択をしました。
タクシーに乗るとドライバーが、
「Zenesuto begin after 5 minutes.」(おそらく、こんな英語だったと思います)
と、我々に語り掛けてきました。
我々の選択は合っていたのだなと思いつつ、10月3日の0時20分にバルセロナ空港に到着しました。
バルセロナから成田への出発時刻は、10月3日の11時5分。
それまでの待機時間は、おおよそ10時間30分。
空港のロビーで仮眠をするも、時間を使い切れないので、本コラムの作成に取り掛かりました。
今回のバルセロナ渡航で得た教訓。
多勢に無勢
(少人数で大勢に向かっても、勝ち目はないこと)
「自分たちに落ち度はない」と、正論を主張しても、多勢の流れには逆らえない。
こんな現実を思い知りました。
多勢の流れに逆らえないからこそ、多勢の流れは正しい方向に向いていないと困る。
そんな政治力というか、民力というか、一人ひとりの良心に責任を持って、社会は形成されなければならない。
こんな思いを強く抱きました。
ですので、最澄(さいちょう)の言葉
「一隅を照らす者これ国の宝なり」
で結びます。
最澄は、
「一人がロウソクを照らすことができるのは小さな一隅でしかない。
しかし、それに影響を受けた人が火を灯し、また別の人がそれを繰り返す。そして、それが一万集まれば国中が照らされる」
と、我々に教えてくれています。
以上、バルセロナ=エル・プラット空港にて、一隅を照らす大切さに目覚めた旅人より。