#140
たとえ話をたとえのまま伝えるのは、育成指導になりません!
私は、コンサルティングをしている最中に、
管理者向け研修のテキストに記した下記の事例を思い出すことがある。
それは、
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50歳を超えた生産現場の班長が、こんなことを言っていた。
「人の能力の満点が10としたら、
8とか9ある人は、放っておいても自分で勉強して伸びていくだろう。
今の時代は、そんな人たちばかりが注目されるけど、それでいいのだろうか。
以前は、能力が1しかない人を、叱ったり、褒めたり、なだめたりしながら、
何とか1.5の力にしようと、リーダーは心血を注いだものだ。
そんな人間が2とか3の力になってくると、
その人は、育ててくれたリーダーを、親父とか兄貴と呼ぶようになる。
企業力の差って、
このように1や2の人材に力を付けさせられるかどうかで決まっていたはずだし、
それが幸之助さんの教えだった。
最近は、そんな気概が失われている気がする」
効率一辺倒の関わりからは、このような関係を築くことはできない。
部下がミスをおかした時に、その打開のために真正面からぶつかる。
お客様に迷惑をかけたときには、自らが先頭に立って対処する。
プライベートに問題を抱えているときには、親身になって相談にのる。
このようなリーダーに人がついてくることは、いつの時代にも共通している。
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という内容。
この事例に出てくる、“幸之助さん”とは、もちろん、松下幸之助さんのこと。
今から約10年以上前に、このような話を私は直接聞いた。
みなさんは、このコメントを読んで、どんな感想を持っただろうか。
能力が1しかない人を、なんとか1.5の力にするとは、少々誇張された表現になっているが、
部下の能力を向上させるために、どれほどの工夫を凝らし、時間を投下しているだろうか。
管理者研修会に参加したマネジャーに、部下育成の実情を確認すると、
本やセミナーで得た知識を、そのまま、部下に伝えて指導育成した気になっている人に出くわす。
例えば、仕事の目的のとらえ方で仕事に取り組む気持ちが変わるということを、
3人のレンガ職人の寓話を通じて学んだとする。
※3人のレンガ職人とは単にレンガを積むことを目的としているレンガ職人と、
壁を作ることを目的にレンガを積んでいる職人と、
教会を建てることを目的にレンガを積んでいる職人がいる。
同じレンガを積む仕事をしていても、仕事の目的の定め方が異なることで、
仕事に取り組む姿勢や気持ちが変わり、やりがいに差が出るというイソップ寓話。
研修で学んだ3人のレンガ職人のたとえ話を部下にそのまま伝えても、
チームメンバーの育成指導にはならないことは、
読者のみなさんには理解していただけるだろう。
ところが、この3人のレンガ職人の寓話を、
そっくりそのままメンバーに伝えるマネジャーは結構多い。
3人のレンガ職人の考え方を活用したメンバー指導の実例を以下に示そう。
あるメーカーが製造した製品に不具合が起きて、
元請けから現場に呼び出されて、問題点の発生原因を追及されると、
仕様書に記載された図面通りに製造されていない事実が判明。
現場に立ち会った品質管理部門の責任者は、まったく弁明できなかった。
原因を確認すると、製造部の人たちは納期を最優先に作業を進めていたため、
図面の規格とは外れることは認識しつつも、
手加工を施し製品を完成させていた実態が浮き彫りになった。
結論として、製造メンバーは、図面通りに製品を製造することを目的とはしておらず、
製品の納期を満たすことを目的にして、必死に仕事をしていたのである。
そして、大きな不具合につながってしまった。
この事例をレンガ職人に置き換えると、
壁を作ることを目的にレンガを積んでいる職人が、製品の納期を目的にした仕事。
教会を建てることを目的にレンガを積んでいる職人が、
図面の規格通りの製品の製造を目的とした仕事。
ということになる。
教会にはたくさんの人が訪れるので、納期を守る前提に安全性の担保が必須となるからだ。
このように、本やセミナーで得た知識は、
メンバーが従事している実際の仕事に置き換えて指導しなければ、何ら意味をなさないのである。
たとえ話をたとえのレベルに留めず、
仕事の実際に置き換えて指導するのがマネジメントであると、心していただきたい。
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