#152
「来年還暦になるんだよな」
「平堀、お前、来年還暦になるんだよな」
この言葉を発したのは、私の大学時代のゼミの恩師。
母校で7年間続けている、「経営コンサルタントの仕事」の講義を終えた時のこと。
大学2年生を対象とした必修科目のなので、
例年だと250人くらい聴講するのだが、
今年はコロナ対策で遠隔授業になり、
講堂に集まった学生はおおよそ10人。
ソーシャルディスタンスを確保するということで、
学内でも一番大きな1,500人収容の大講堂が使われたため、
演台の前に立って目にした景色は異様だった。
講義を始めるに当たっての自己紹介で私は、毎回この写真を投影している。
1984年のゼミ合宿の時の写真。今から36年も前になる。
注釈が長くなったが、
40年近く付き合っている恩師からの
「平堀、お前、来年還暦になるんだよな」
の言葉に込められた想いを想像してみたい。
恩師の年齢は、私より10歳上なので、
来年で古希の70歳になり定年を迎える。
定年後のライフプランを尋ねると、恩師は
「弁護士の仕事も飽きたし、学長になって大学に残ればという先生もいるけど、
管理の仕事は俺に向いていないしな」
「まぁ、悠々自適の生活をするよ」
と笑い飛ばす。
この会話は、
大学の近くにある、恩師の行きつけの喫茶店風レストラン。
恩師はこのお店を私が学生の時から贔屓にしているので、
店主とも40年近くの付き合いなる。
出される料理は、
・ジャーマンポテト
・鶏のから揚げ
・ポークソテー
・特製ハンバーグ
まさに、大学生が喜ぶカロリー超高めの料理を肴に、
今どきの他愛もない話が交わされ、あっという間に時は過ぎていく。
ワインを飲むペースが落ちない恩師に向かって私が、
「先生、お酒、全然弱くならないですね」
と言うと、
「馬鹿野郎、相当弱くなったよ」
と。
テーブルの上には、
・ビール小瓶2本
・スパークリングワイン1本
・赤ワイン2本
の空瓶が並んでいる。
こんなやり取りをしながら、
「平堀、お前、来年還暦になるんだよな」
に込められた恩師の想いを想像すると、
「もう一花さかせようぜ」
という答えが浮かんでくる。
この理由の第一として、
恩師と会話をしている時の自分の心持が、
学生時代と全く変わっていないことが挙げられる。
もう一つの理由は、酒が回ってきてからの
「お前たちの代もとんがっていたけど、
それ以上に勢いのあるお前らの先輩が一人いる」
との、先生の発言。
詳しく聞くと、
誰もが知っている企業の再生を実現させた女性社長とのことで、
私も、彼女の活躍ぶりを、本やTVで見聞きしている著名人だった。
40年近くお付き合いさせていただいている恩師から
この話を聞いたのは、今回が初めて。
「平堀、お前、来年還暦になるんだよな」
と、私に声をかけた後の会食で、恩師がこの先輩を持ち出したのは、
「還暦は通過点で、まだまだ、やれることがあるだろう」
との想いがあるからに違いないと、
私は勝手に結論づけて、心に火がついていた。
まさに青春真っただ中。
別れ際の恩師の背中は、私にそう語っているようだった。
追いかける背中を見せてくれる人の存在は、本当に有難い。
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