#173
そのロープレ、なんのためにするのですか?
ある居酒屋の店長ミーティングで、
サービスの質が低下しているとの課題が取り上げられました。
サービス力は、お客様の満足度と直結するので、
早々に改善せねばとの流れになり、
ロープレを定期的に実施するという結論に至りました。
ロープレは実践力を養う上で有効なトレーニング手法なのですが、
私は、ここで待ったをかけ、
各店舗で発生している、行き届いていないサービスの実例を挙げるように提案しました。
各店長から出された実例は、以下の通りでした。
①おしぼりを出し忘れる
②おすすめした料理を注文していただいたお客様に、料理の感想を聞いていない
③料理を別のテーブルに出すミスをしたが、その謝罪が形式的だった
④「いらっしゃまいませ」のお声かけが作業をしながらで、心がこもっていない
⑤オープンキッチンの中で、料理人たちが食材の良し悪しを話している
⑥食べ終わったお皿をさげない
⑦取り皿や取り分け用のお箸を、お客様からくださいと催促される
⑧「すいませーん!」と何回も言われる
⑨お客様の問いかけに曖昧に答えて、そのままにしてしまう
⑩グラスを持つ位置が高い(口元に近い位置を持つと、お客様に不快感を与える)
⑪料理を置く場所が的確ではない
⑫お客様が箸を落としても、それに気づけない
私は、ホワイトボードに列挙されたこれらの実例を見ながら、
各店長に、
「この中で、ロープレによって改善できそうな実例はどれでしょうか?」
と、尋ねました。
勘のいい店長たちは、
「サービス力向上のトレーニングをロープレだと決めつけていたのは、浅はかでした。
我々店長たちが問題視しているサービスを具体的に整理した上で対策を講じないと、
“ロープレのためのロープレ”になってしまいますよね」
と、答えてくれました。
このように、対策ありきで結論を出しているケースは、
どの企業でも散見されるのではないでしょうか。
問題の解決策を定めるには、
・発生している問題の実例を列挙する
・問題の改善に有効な対策を練る
という手順を踏むのが基本です。
今回は、サービス力の低下が課題だったので、
この基本に則り、それらの実例を上記のように列挙してもらったわけです。
その後、ロープレによって解消されそうな
行き届いていないサービスを選んでもらったところ、
②おすすめした料理を注文していただいたお客様に、料理の感想を聞いていない
③料理を別のテーブルに出すミスをしたが、その謝罪が形式的だった
⑨お客様の問いかけに曖昧に答えて、そのままにしてしまう
⑪料理を置く場所が的確ではない
が、特定されました。
その他の問題への対処は、サービスの基本を教えた上で、
できていないシーンを目にした際に、その都度、実地指導することになりました。
この居酒屋がこれらの対策を講じて、①~⑫の問題が改善されたら、
顧客の満足度が飛躍的に高まるのは、間違いないでしょう。
この居酒屋の店長たちが口にした、
“ロープレのためのロープレ”とは、
すなわち、目的を定めずに手段を講じてはならないとの気づきでした。
「その対策は、何のために設定したんだっけ?」と、
そもそもの目的を確認してみると、
日常に埋没している落とし穴が見つかるかもしれません。
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